
【建築士が解説】不動産一括査定で「家の価値」を正しく見極める方法
マイホームを売却する際、多くの人が利用するのが「不動産一括査定サイト」でしょう。複数の不動産会社からまとめて査定額が提示されるため、手軽に家の概算価格を知ることができ、非常に便利なサービスです。しかし、そこで提示される「査定額」を鵜呑みにしてしまうと、本来の家の価値を見誤り、売却で損をしてしまう可能性があります。
一級建築士として、私は住宅の構造や性能、そしてそれが持つ潜在的な価値を深く理解しています。今回は、不動産一括査定で提示される査定額の裏側を解説し、あなたの家の「本当の価値」を正しく見極め、高値で売却するためのポイントをお伝えします。
不動産一括査定で「査定額」に差が出る理由
複数の不動産会社から査定を受けると、驚くほど査定額にばらつきがあることに気づくでしょう。なぜこのような差が生まれるのでしょうか?主な理由は以下の通りです。
査定方法の違い:
机上査定(簡易査定): 住所、築年数、面積などの情報のみで大まかな査定を行うもの。詳細な物件確認をしないため、会社ごとの過去の取引事例や得意な物件タイプによって差が出やすいです。
訪問査定(詳細査定): 実際に家を訪問し、間取り、設備、内外装の状態、日当たり、周辺環境、そして建築士の視点から言えば建物の構造や劣化状況まで詳細に確認して行うもの。この段階で、会社の専門性や物件への理解度が査定額に反映されます。
不動産会社の得意分野:
戸建てに強い、マンションに強い、特定の地域に特化している、富裕層向けの物件が得意など、不動産会社にはそれぞれ得意分野があります。自分の物件とマッチする会社ほど、適正な高値を付けてくれる可能性が高まります。
販売戦略とやる気:
「まずは高値で受けて媒介契約を取りたい」という戦略の会社もあれば、「現実的な価格を提示し、確実に売り切りたい」という会社もあります。また、担当者のやる気や営業力も査定額に影響を与えることがあります。
建物の「見えない価値」の評価:
建物の耐震性、断熱性、気密性といった「住宅性能」は、一見しただけではわかりにくいもの。これらを正しく評価できる不動産会社は限られており、結果として査定額に差が出ることがあります。
【建築士が解説】あなたの家の「本当の価値」を見極めるポイント
査定額のばらつきに惑わされず、あなたの家の本当の価値を正しく見極めるためには、以下の点に注目しましょう。
1. 査定額の「根拠」を徹底的に聞く
ただ査定額だけを提示してくる会社ではなく、その金額に至った「根拠」を明確に説明してくれる会社を選びましょう。
ポイント:
近隣の類似物件の取引事例は?
どのような物件情報を基に査定したのか?(机上か訪問か)
あなたの家のどんな点がプラス(またはマイナス)評価になったのか?
特に、建物の状態や設備、住宅性能について、具体的にどう評価されたのかを質問しましょう。
2. 「住宅性能」をアピールする資料を準備する
多くの不動産会社は、住宅の**「デザイン」や「間取り」といった目に見える情報**を重視しがちです。しかし、住み心地や光熱費、そして災害への強さに直結する「住宅性能」は、家の資産価値に大きく影響します。
建築士が語る重要性:
耐震等級: 「耐震等級3」など、高い耐震性能を持つ家は、地震保険料の割引だけでなく、買主にとって大きな安心材料であり、価値を高めます。
断熱性能・省エネ性能: ZEH基準適合や高い断熱性能(断熱等性能等級)を持つ家は、光熱費が安く、快適な暮らしができるため、買主にとって非常に魅力的です。
長期優良住宅認定: 認定を受けている家は、構造の耐久性や維持管理のしやすさが国から認められているため、買主がローンや税制面で優遇を受けられる可能性があり、これも価値を高めます。
ポイント:
これらの性能に関する図面、仕様書、認定通知書、性能評価書などがあれば、必ず不動産会社に提示しましょう。口頭だけでなく、客観的な数値や証拠を示すことで、査定担当者に「この家は性能が高い」という認識を持たせることができます。
「見えない価値」をきちんと評価できる不動産会社を選ぶことが重要です。
3. 「リフォーム・リノベーションの可能性」を検討する
査定額が思ったより低かった場合でも、すぐに諦める必要はありません。リフォームやリノベーションで、家の価値を向上させられる可能性があります。
建築士が語る視点:
築年数が経過した物件でも、水回りの交換、内装の刷新、間取り変更、さらには耐震補強や断熱改修といった性能向上リノベーションを行うことで、新築同様の快適性や安全性を手に入れられ、査定額を大きく引き上げられる可能性があります。
費用対効果の高いリノベーションを見極めることが重要です。例えば、水回りの交換は比較的費用がかかりますが、購入希望者からの印象は大きく変わります。
ポイント:
不動産会社に「リノベーションした場合の査定額」や「どのような改修が売却に有利か」を相談してみましょう。
リノベーションの専門知識を持つ不動産会社や、建築士が連携している不動産会社を選ぶと、具体的な提案を受けやすいでしょう。
まとめ:査定額はあくまでスタートライン
不動産一括査定で提示される査定額は、あくまで「その時点での評価」であり、売却活動のスタートラインに過ぎません。
査定額の根拠を徹底的に確認する。
あなたの家が持つ「住宅性能」という見えない価値を積極的にアピールする。
必要に応じて、費用対効果の高いリフォーム・リノベーションの可能性を探る。
これらのポイントを押さえ、あなたの家の本当の価値を理解してくれる信頼できる不動産会社を見つけることが、成功する不動産売却への一番の近道となるでしょう。私たちは、建築のプロとして、あなたの家の価値を最大限に引き出すお手伝いをさせていただきます。
イエシール / 一級建築士と賢く家づくり