深掘り解説コラム62 / 【断熱材の選び方】高気密高断熱住宅を賢く建てる

「夏は涼しく、冬は暖かい家を建てたい」

多くの人が家づくりで抱く共通の願いです。この理想を叶える鍵となるのが、高気密高断熱住宅です。そして、その性能を左右する最も重要な要素が「断熱材」です。

断熱材にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。適切な断熱材を選ばなければ、高気密高断熱住宅の性能を十分に発揮できず、後悔することにもなりかねません。

今回は、一級建築士の視点から、高気密高断熱住宅を賢く建てるための断熱材の選び方を分かりやすく解説します。

なぜ「高気密高断熱」住宅が重要なのか?

高気密高断熱住宅は、ただ快適なだけでなく、多くのメリットがあります。

 光熱費の削減: 夏は外からの熱を、冬は外からの冷気を遮断するため、冷暖房効率が大幅に向上し、光熱費を削減できます。

 健康的な暮らし: 家の中の温度差が少なくなるため、ヒートショックのリスクを減らし、アレルギーや結露の原因となるカビ・ダニの発生を抑制します。

 補助金や税制優遇: 高い断熱性能は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や長期優良住宅の認定基準となり、補助金や住宅ローン減税などの優遇措置を受けられます。

断熱材の種類と選び方

断熱材は、大きく分けて「繊維系」と「発泡プラスチック系」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、建物の部位や予算に合わせて選びましょう。

1. 繊維系断熱材(グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなど)

 特徴: 細かい繊維を絡めて空気の層を作ることで断熱します。価格が比較的安価で、防火性や吸音性に優れています。

 メリット:

  コストパフォーマンスが良い

  火に強く、燃えにくい

  音を吸収する効果がある

 デメリット:

  湿気に弱く、施工時に隙間ができると性能が低下しやすい

  施工の丁寧さが性能を大きく左右するため、施工業者の腕が重要

 選び方のポイント: 「密度」を重視しましょう。密度が高いほど断熱性能が高く、へたりにくい傾向があります。

2. 発泡プラスチック系断熱材(硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームなど)

 特徴: プラスチックを発泡させて作る板状の断熱材です。湿気に強く、断熱性能が非常に高いのが特徴です。

 メリット:

  高い断熱性能を発揮する

  湿気を通しにくく、壁体内結露を防ぎやすい

  施工が容易で、品質が安定しやすい

 デメリット:

  繊維系に比べて価格が高価

  火に弱いものや、燃焼時に有毒ガスを発生するものもある

 選び方のポイント: 「熱伝導率」をチェックしましょう。この数値が小さいほど、断熱性能が高いことを示します。

断熱材を賢く選ぶための「建築士の視点」

単に断熱材の種類を選ぶだけでなく、以下の点も考慮することが重要です。

1. どこに使うかで断熱材を使い分ける

 壁: 繊維系、発泡プラスチック系のどちらも使えます。コストと性能のバランスで選びましょう。

 屋根・天井: 熱は上へ逃げるため、高い断熱性能が求められます。発泡プラスチック系断熱材や、吹付断熱(現場で発泡させて隙間なく充填する断熱材)がおすすめです。

 床・基礎: 湿気が上がりやすい場所です。湿気に強い発泡プラスチック系断熱材が適しています。

2. 断熱材の厚みと施工方法を重視する

いくら高性能な断熱材を選んでも、「隙間なく、均一に施工すること」が何よりも重要です。

 建築士の役割: 設計段階で、断熱材の種類、厚み、施工方法を細かく指定します。そして、施工監理時に、断熱材が設計図通りに施工されているかを厳しくチェックします。

 ポイント: 信頼できる建築士や施工業者に依頼し、断熱材の施工を任せることが、高気密高断熱住宅を成功させる一番の近道です。

まとめ:断熱材は「家づくりの要」

断熱材は、家づくりにおいて地味に感じるかもしれませんが、あなたの暮らしの快適さや、将来の家計、そして建物の寿命にまで影響する、非常に重要な建材です。

 断熱材の種類と特性を理解する。

 断熱材の性能だけでなく、施工の丁寧さを重視する。

 建築士に相談し、総合的な視点で断熱計画を立てる。

これらのポイントを押さえることで、あなたは理想の性能を持つ、快適で経済的な住まいを手に入れることができるでしょう。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

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