
住宅ローンを組む際、多くの人が悩むのが「変動金利」にするか「固定金利」にするかという選択です。特に、現在は歴史的な低金利が続いているため、金利の低い変動金利を選ぶ人が増えています。しかし、変動金利には「金利変動リスク」という大きな不安要素がつきまといます。
金利が上昇すると、毎月の返済額が増え、家計を圧迫する可能性があります。一級建築士として、私はお客様の資金計画を立てる中で、将来にわたる返済計画を一緒にシミュレーションし、このリスクにどう備えるべきかアドバイスしています。
今回は、変動金利のリスクの正体と、それに対する具体的な対策、そして今後の金利動向の見通しについて解説します。
変動金利のメリットと「金利変動リスク」の正体
変動金利は、借り入れ当初の金利が固定金利よりも低いため、毎月の返済額を抑えられるという大きなメリットがあります。しかし、その裏側にあるのが、将来の金利上昇リスクです。
金利変動リスクの正体:
返済額の増加: 金利が上昇すると、それに伴って毎月の返済額が増加します。
元金返済の停滞: 「5年ルール」や「125%ルール」といった上限があるため、毎月の返済額が急に大幅に上がることはありませんが、金利が上昇した分、返済額に占める利息の割合が増え、元金の返済が進まなくなる可能性があります。
ライフプランへの影響: 毎月の返済額が確定しないため、将来の教育費や老後資金など、長期的なライフプランが立てにくくなります。
金利上昇リスクに備えるための3つの対策
変動金利を選んだ場合でも、以下の対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることができます。
1. 繰り上げ返済を計画的に行う
変動金利が低い今のうちに、積極的に繰り上げ返済を進めて、ローンの元金を減らしておきましょう。
ポイント: ローンを借りてからできるだけ早い時期に行うのが最も効果的です。元金が減れば、金利が上昇した際の返済額増加幅も小さくなります。
2. 余裕を持った借入額に抑える
金利が上昇した場合でも、家計が破綻しないように、無理のない範囲で借入額を設定することが何よりも重要です。
ポイント:
借入額は、年収の5〜6倍程度に抑えるのが一般的です。
金利が仮に1%上昇しても、毎月の返済額が増えても無理なく返済できるか、シミュレーションをして確認しましょう。
3. 金利タイプ変更や借り換えも視野に入れる
変動金利から固定金利への変更や、他社への借り換えも有効な対策です。
ポイント:
金利が低い間に、固定金利への変更を検討する: 多くの金融機関では、変動金利から固定金利への変更が可能です。金利上昇の兆候が見えたら、早めに検討しましょう。
借り換え先の情報収集: 他の金融機関に借り換えることで、より有利な金利条件で借りられる可能性があります。ただし、借り換えには諸費用がかかるため、その費用を考慮して判断することが重要です。
今後の金利見通しと、建築士からのアドバイス
今後の金利動向は、誰も正確に予測することはできません。しかし、専門家の間では、これまでの歴史的な低金利から、緩やかな金利上昇へと向かう可能性が高いと見られています。
建築士としての見解:
資金計画の重要性: 家づくりにおいては、建物の設計だけでなく、住宅ローンを含めた資金計画が最も重要です。変動金利を選ぶ場合は、金利が上昇しても破綻しない「余裕のある返済計画」を立てることが大前提です。
建物の性能向上: 私は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの高性能住宅を推奨しています。高性能住宅は光熱費を大幅に削減できるため、仮に金利が上昇して毎月の返済額が増えても、光熱費の削減分で家計の負担を軽減することができます。
まとめ:変動金利は「計画的なリスク管理」が鍵
住宅ローンを変動金利で組むことは、低金利の恩恵を最大限に受けるための賢い選択肢です。しかし、そのメリットを享受するためには、金利変動リスクを正しく理解し、計画的に対策を講じることが不可欠です。
借り入れ当初の低金利を利用して、繰り上げ返済を進める。
無理のない借入額に抑え、金利が上昇しても余裕のある返済計画を立てる。
金利動向に注意し、必要に応じて金利タイプの変更も検討する。
これらのポイントを押さえることで、あなたは変動金利のリスクを恐れることなく、安心で豊かなマイホームライフを送ることができるでしょう。
イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり