
住宅を購入したり、家を新築する際、ほとんどの方が加入を検討するのが火災保険です。大切な家と暮らしを守るために欠かせない火災保険ですが、「保険料ってどうやって決まるの?」と疑問に思ったことはありませんか? 実は、火災保険料を決める重要な要素の一つに、「建物の構造」があります。
一級建築士として、建物の構造を日々見ている私から、なぜ建物の構造によって火災保険料が変わるのか、その理由と、ご自身の家がどの構造級別に該当するのかを見分けるポイントを詳しく解説します。
なぜ建物の構造で保険料が変わるのか?
火災保険は、文字通り「火災」による損害だけでなく、風災、水災、雪災、落雷、爆発、盗難など、さまざまな災害や事故による損害を補償するものです。保険会社は、これらのリスクに対して、建物がどれだけ強いか、あるいは弱いかを判断し、保険料に反映させています。
その中でも、「火災」のリスク、そして他の災害における「建物の損害のしにくさ」を判断する上で最も重要な指標の一つが、建物の「構造」なのです。
例えば、木造の家と鉄骨造の家では、火災に対する延焼のしやすさや、台風などの自然災害に対する強度に違いがあります。当然、リスクが低いと判断される構造の方が、保険料は安くなります。
火災保険の「構造級別」とは?
火災保険では、建物の構造を大きく以下の3つの「構造級別」に分類し、保険料を算出しています。
M構造(マンション構造)
T構造(耐火構造)
H構造(非耐火構造/木造)
一般的に、M構造が最も保険料が安く、次にT構造、H構造が最も高くなります。これは、M構造が火災や自然災害に対して最もリスクが低いと評価されるためです。
1. M構造(マンション構造)
該当する建物: 鉄筋コンクリート造(RC造)または鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンションや、共同住宅の各住戸。
特徴: 火災に強く、延焼のリスクが極めて低い。また、台風や地震などの自然災害にも比較的強いとされています。
保険料: 最も安い。
2. T構造(耐火構造)
該当する建物: 木造でも「省令準耐火構造」や「準耐火構造」の認定を受けている戸建て住宅、あるいは鉄骨造(S造)の戸建て住宅。
特徴: 木造であっても、壁や天井の内部に石膏ボードなどを施すことで、火災の延焼を一定時間防ぐ性能を持たせています。鉄骨造も、木造よりは火災に強いとされています。
保険料: M構造よりは高いが、H構造よりは安い。
3. H構造(非耐火構造/木造)
該当する建物: 上記のM構造、T構造に該当しない一般的な木造戸建て住宅。
特徴: 木材が主構造であるため、火災の延焼リスクが他の構造に比べて高いと判断されます。
保険料: 最も高い。
あなたの家はどの構造級別?見分け方のポイント
ご自身の家がどの構造級別に該当するかは、建築確認申請書や設計図書、あるいは不動産売買契約書などに記載されている「建物の構造」を確認するのが確実です。
特に重要なのが、木造住宅にお住まいの方です。「うちは木造だからH構造だ」と決めつけていませんか? 実は、最近の新築木造住宅の多くは、「省令準耐火構造」を採用しており、これによりH構造ではなくT構造に分類されるケースが増えています。
「省令準耐火構造」とは、建築基準法で定められた「準耐火構造」に準ずる耐火性能を持つ構造のことです。具体的には、以下の3つの特徴を持っています。
延焼防止: 火が燃え広がるのを防ぐ構造。
防火区画: 部屋や階ごとに火が燃え広がらないように区切られている。
防火措置: 火災が発生しても柱や梁が急激に弱くならない対策がされている。
もし、ご自身の木造住宅が省令準耐火構造であるか不明な場合は、建築会社や工務店に問い合わせて確認してみましょう。T構造に該当すれば、保険料が大きく下がる可能性があります。
まとめ:火災保険料は「建物の構造」を正しく理解することから
火災保険料は、補償内容や保険期間によっても変わりますが、建物の構造級別を正しく把握することが、無駄な保険料を支払わないための第一歩です。
ご自身の家の構造がM、T、Hのどれに該当するか確認する。
特に木造戸建ての場合は、「省令準耐火構造」の有無を必ずチェックする。
「よく分からないから」と任せきりにするのではなく、ご自身の建物の特性を理解し、適切な構造級別で火災保険を契約することで、賢くリスクに備えることができます。
このサイトでは、火災保険の選び方から、建物の性能が保険料にどう影響するかまで、建築士の視点から詳しく解説していきます。ぜひ他の記事も参考に、あなたの家と家計を守る最適な保険を見つけてください。
イエシール / 一級建築士と賢く家づくり