深掘り解説コラム47 / 家を建てる前の土地選び:建築士が重視するポイント

「理想の家を建てる」という夢を叶えるためには、その土台となる「土地選び」が最も重要です。どんなに素晴らしい設計をしても、土地の条件が悪ければ、理想の住まいは実現できません。しかし、土地の良し悪しは、見た目だけでは判断できないことが多く、専門的な視点が必要となります。

一級建築士として、私はお客様の家づくりをサポートする中で、土地の「隠された情報」を見抜くことの重要性を常に感じています。今回は、家を建てる前の土地選びで、建築士が特に重視する3つのポイントについて、具体的なチェック項目を交えて解説します。

1. 法規制とコスト:理想と現実を左右する「見えない条件」

土地探しは、希望するエリアで広さや形が良い土地を見つけることから始まりますが、そこに「家を建てられるか」「どのような家が建てられるか」は、法律によって細かく定められています。

土地の法規制をチェック

 用途地域: 「第一種低層住居専用地域」「商業地域」など、その土地にどのような建物を建てられるかが決まっています。

 建ぺい率・容積率: 敷地面積に対して、建物の建築面積と延床面積がどれくらいまで許されるかを示す割合です。この数字が小さいと、希望する広さの家が建てられない可能性があります。

 道路付け: 建築基準法上、建物は幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。接道義務を果たしていない土地は、再建築ができないケースがあります。

 高さ制限: 日照権や景観を保護するため、建物の高さや形状に制限がある場合があります。

これらの法規制は、役所の都市計画課などで確認できます。専門家でないと分かりにくい部分も多いので、土地を見つけたら、必ず建築士や不動産の専門家に相談しましょう。

コストを左右する「付帯費用」

土地代以外にかかる費用を事前に把握しておかないと、予算オーバーの原因となります。

 地盤改良費: 軟弱地盤の場合、改良工事が必要です。その費用は数百万円に及ぶこともあります。

ライフラインの引き込み費用: 上下水道やガス、電気が敷地に引き込まれていない場合、引き込み工事費用がかかります。特に前面道路からの距離が長い場合は注意が必要です。

 解体費: 古家付きの土地を購入する場合、解体費用を見込んでおく必要があります。

2. 災害リスクと安全性の評価:安心して暮らすための「地質」と「立地」

家は、何十年も安心して暮らすための場所です。災害リスクを事前に把握し、安全性を確保することは、土地選びで最も重要なポイントです。

地盤の強度と液状化リスク

 ハザードマップの確認: 地域のハザードマップを確認し、洪水、土砂災害、液状化などのリスクを把握しましょう。

 地歴の調査: 過去に沼地や田んぼだった土地は、地盤が弱い可能性があります。

 ボーリング調査: 土地の購入前に、ボーリング調査やスウェーデン式サウンディング試験などの地盤調査を行うことで、地盤の強度を正確に知ることができます。

周辺環境と将来の展望

 日当たり・風通し: 土地を訪れる際は、時間帯や季節を変えて、日当たりや風通しをチェックしましょう。

 近隣の状況: 隣接する建物の高さや窓の位置を確認し、プライバシーが守られるか、将来的に高い建物が建つ可能性がないかを予測しましょう。

 騒音: 幹線道路や線路、商業施設が近い場合は、騒音の問題がないかを確かめましょう。

3. 家づくりとの相性:土地の個性を活かす「設計」

家づくりは、土地の個性(形状、高低差、日当たりなど)をどう活かすかが、住み心地の良さを大きく左右します。

 土地の形状と建物の配置:

  整形地(正方形や長方形)は建物を配置しやすいですが、不整形地(三角形や旗竿地など)でも、設計次第で個性的な家を建てられます。

  旗竿地は、接道部分が狭く、家まで距離があるため、プライバシーが守られやすいというメリットもあります。

 高低差の有無:

  高低差のある土地は、造成工事費用がかかる一方で、地下室やスキップフロアなど、立体的な空間を設計できるメリットもあります。

 建物の向き:

  日当たりや風通しを考慮し、LDKや居室をどの向きに配置するか、具体的にイメージしてみましょう。

まとめ:土地選びは「建築士」と一緒に

土地選びは、「見た目」だけでなく、「法規制」「コスト」「安全性」といった、多くの専門的な視点から総合的に判断することが重要です。

 法規制: 建てられる家の広さや形を左右する「建ぺい率・容積率」などを事前に確認する。

 コスト: 土地代以外にかかる「地盤改良費」や「ライフライン引き込み費用」を把握する。

 安全性: ハザードマップや地盤調査で災害リスクを評価する。

これらのポイントは、建築士や不動産会社のプロに相談することで、より正確に把握できます。特に、家づくりのパートナーとなる建築士と早い段階から土地を探すことで、その土地の個性を最大限に活かした、理想の住まいを実現することができるでしょう。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

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