
「高性能な家は魅力的だけど、建築費用が高くなりそうで手が出ない…」
そう考えている方は少なくありません。しかし、国や地方自治体は、高性能住宅の普及を目的として、さまざまな補助金や助成金の制度を設けています。これらの制度を賢く活用すれば、初期費用を抑えつつ、断熱性や省エネ性に優れた、快適で家計にも優しいマイホームを手に入れることが可能です。
一級建築士として、私はお客様の資金計画をサポートする中で、補助金や助成金が理想の住まいを実現するための重要なカギとなることを実感しています。今回は、高性能住宅の建築で活用できる主な補助金制度と、その活用術を解説します。
なぜ「高性能住宅」に補助金が出るのか?
国や地方自治体が高性能住宅を推奨し、補助金を出している主な理由は、以下の2つです。
脱炭素社会の実現:
住宅の省エネ性能を高めることで、冷暖房のエネルギー消費量を削減し、CO2排出量を抑制します。
国民の健康で快適な暮らしの実現:
高い断熱性を持つ住宅は、冬のヒートショック対策や結露防止に繋がり、健康被害のリスクを低減します。
つまり、高性能住宅は「地球環境」にも「住む人」にもメリットが大きいため、政策的に推進されているのです。
高性能住宅で使える主な補助金・助成金
補助金制度は数多くあり、年度や地域によって内容が変動します。ここでは、代表的な制度をいくつかご紹介します。
1. ZEH(ゼッチ)補助金
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、家庭で消費するエネルギー量よりも、太陽光発電などで創り出すエネルギー量の方が多い、または差し引きゼロになる住宅のことです。
補助金の内容:
住宅の性能や設備に応じて、数十万円〜100万円以上が補助されます。
要件:
太陽光発電システムや高断熱窓、高効率の空調設備など、定められた基準を満たす必要があります。
ZEHビルダー(ZEH普及目標を掲げているハウスメーカーや工務店)に依頼することが条件となります。
2. 地域型住宅グリーン化事業
国が、地域の木材を使った省エネ性能の高い住宅の普及を目的として、地域の中小工務店などを支援する事業です。
補助金の内容:
ZEHや長期優良住宅、低炭素住宅などの高性能住宅を建てる際に、補助金が交付されます。
要件:
地域の工務店がグループを組んで申請します。施主個人が申請するのではなく、依頼した工務店がこの事業に参加しているかどうかが鍵となります。
3. 住宅ローン減税(優遇措置)
これは直接的な補助金ではありませんが、高性能住宅は税制面でも優遇されます。
内容:
認定長期優良住宅やZEH水準省エネ住宅は、一般の住宅に比べて住宅ローン控除の借入限度額が上乗せされます。
要件:
長期優良住宅やZEH水準の認定を受ける必要があります。
4. その他、地方自治体の補助金
国だけでなく、各地方自治体も独自の補助金制度を設けています。
内容:
県産材の使用、ZEH住宅、断熱改修など、地域の実情に合わせたさまざまな制度があります。
ポイント:
依頼する建築会社が、地域の補助金制度に精通しているかどうかが重要です。
補助金・助成金を賢く活用するためのポイント
補助金制度は複雑で、申請手続きにも手間がかかります。以下のポイントを押さえて、確実に補助金を獲得しましょう。
1. 建築パートナー選びが最も重要!
補助金制度を活用する上で、依頼するハウスメーカーや工務店の知識と経験が最も重要です。
ポイント:
「補助金を活用したい」という意思を、家づくりの初期段階で明確に伝えましょう。
依頼予定の会社が、どのような補助金制度に精通しているか、申請実績があるかを確認しましょう。
会社によっては、補助金申請の手続きを代行してくれるところもあります。
一級建築士の視点: 補助金申請は、建物の仕様や性能を細かく証明する必要があるため、専門知識が不可欠です。信頼できる建築パートナーを選ぶことが、スムーズな申請への一番の近道です。
2. 補助金は「予算の一部」として考えない
補助金は、あくまで「後から入ってくるお金」です。
ポイント:
補助金の交付は、工事が完了し、申請手続きが終わってからになるため、数ヶ月〜1年ほどかかる場合もあります。
補助金が確定する前に、その分をあてにして契約すると、万が一交付されなかった場合に資金計画が破綻するリスクがあります。
補助金は「プラスアルファ」の収入として考え、余裕を持った資金計画を立てましょう。
3. 補助金にもコストがかかる場合がある
補助金を活用するためには、高性能な建材や設備を導入する必要があります。
ポイント:
補助金を獲得するための初期費用(高性能な窓や断熱材の導入など)が、補助金額を上回ることもあります。
建築会社に、「補助金を含めた場合のトータルのコスト」と「補助金がなかった場合のコスト」の両方で見積もりを出してもらい、どちらがお得かを比較検討しましょう。
まとめ:高性能住宅の「価値」と「補助金」を両立する
高性能住宅は、初期費用が多少かかっても、光熱費の削減や健康的な暮らしといった「長期的なメリット」があります。そして、補助金は、その初期費用を抑えるための強力なツールです。
家づくりの初期段階で、補助金活用を視野に入れる。
補助金制度に精通した建築パートナーを見つける。
補助金は「後から入ってくるお金」と捉え、余裕を持った資金計画を立てる。
これらのポイントを押さえることで、あなたは補助金という追い風を味方につけ、理想の高性能住宅を賢く、お得に手に入れることができるでしょう。
イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり