深掘り解説コラム41 / 水害リスクが高い地域での火災保険の選び方:水災補償の重要性

近年、台風や集中豪雨による河川の氾濫、内水氾濫といった水害が全国各地で頻発しています。

「ハザードマップを見ると、自分の家が浸水区域になっている

「水害リスクが高い地域に住んでいるけれど、火災保険でどこまでカバーされるの?」

そう不安に感じている方は少なくないでしょう。水害リスクが高い地域に住む方にとって、火災保険の「水災補償」を正しく理解し、賢く備えることは、大切な資産を守る上で最も重要なことの一つです。

一級建築士として、私は土地探しの段階から、お客様の住まいが将来にわたって安全であるよう、災害リスクの評価を重視しています。今回は、水害リスクが高い地域での火災保険の選び方と、水災補償の重要性について徹底解説します。

水災補償の基本:何が補償対象になるのか?

火災保険は、火災だけでなく、風災、ひょう災、雪災、そして水災など、さまざまな災害による損害を補償します。しかし、水災補償は、単に「雨が降って家が濡れた」だけでは補償されません。

水災補償の対象となる損害は、一般的に以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

 建物や家財が床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水によって損害を受けた場合。

 建物の再調達価額(同等の建物を建て直すのにかかる費用)の30%以上の損害を受けた場合。

つまり、「一定以上の規模の水害」が補償の対象となります。単なる雨漏りや、地盤面から45cm未満の浸水による損害は、原則として補償対象外です。

水害リスクが高い地域での賢い火災保険の選び方

水害リスクが高い地域に住む方にとって、火災保険選びは慎重に行う必要があります。以下のポイントを押さえて、万全の備えをしましょう。

1. ハザードマップを必ず確認する

火災保険を選ぶ前に、まずは「ハザードマップ」でご自身の住まいの水害リスクを正確に把握することが大前提です。

 ポイント:

  国土交通省や各市町村のウェブサイトで、洪水ハザードマップや内水氾濫ハザードマップを確認しましょう。

  浸水想定区域や土砂災害警戒区域に該当するかどうかをチェックし、その区域の「浸水の深さ」や「想定される浸水時間」も確認しましょう。

  一級建築士の視点: 私は、土地探しの段階でハザードマップを必ず確認し、お客様にリスクを伝えます。リスクが高い場合は、高床式にする、1階に水回りを置かない、避難経路を確保するなど、設計で対策を講じることも可能です。

2. 水災補償は「必須」と考える

ハザードマップで水害リスクが高いと分かった場合、水災補償を外す選択肢はありません。万が一の事態に備え、水災補償を付帯させることは必須と考えるべきです。

 ポイント:

  保険会社によっては、水災補償を付けることで保険料が大幅に上がる場合があります。

  複数の保険会社から見積もりを取り、補償内容と保険料のバランスが取れているものを選びましょう。

3. 保険金額は「再調達価額」を基に設定する

水害で建物が大きな被害を受けた場合、建て直す費用が必要になります。

 ポイント:

  保険金額を、建物を新しく建て直すのに必要な「再調達価額」で設定しましょう。

  建物評価額が低すぎると、いざという時に補償が足りなくなる(過少保険)リスクがあります。

4. 地震保険の加入も検討する

地震保険は地震による建物の損壊を補償するものですが、津波による浸水被害も補償対象に含まれています。

 ポイント:

  海抜が低い地域や、津波のリスクがある地域に住んでいる方は、地震保険への加入も必ず検討しましょう。

  地震保険は火災保険とセットでしか加入できません。

水害リスクを軽減するための「建物の工夫」と「火災保険」の組み合わせ

一級建築士の視点から、ハード面(建物)とソフト面(保険)の両方で水害に備えることを強く推奨します。

 ハード面(建物の工夫):

  高床式住宅: 基礎部分を高くし、床面を地面から離すことで、浸水被害を軽減できます。

  電気設備の配置: 分電盤やコンセントなどの電気設備を、浸水が想定される高さよりも高い位置に設置します。

  水密性の高い建具: 浸水を防ぐために、止水板や水密性の高い玄関扉などを設置する。

 ソフト面(火災保険):

  水災補償を付帯させる: リスクが高い地域では必須。

  

保険金額を適切に設定する: 万が一の事態に備え、再調達価額を基に設定する。

  地震保険にも加入する: 津波による被害に備える。

これらの対策を組み合わせることで、万が一水害が発生しても、被害を最小限に抑え、その後の生活を速やかに再建するための資金を確保することができます。

まとめ:水害リスクへの備えは「知ること」から始まる

水害リスクが高い地域に住んでいるからといって、悲観的になる必要はありません。重要なのは、そのリスクを正しく「知り」、それに応じた適切な「備え」をすることです。

 ハザードマップでリスクを正確に把握する。

 火災保険の水災補償は必ず付帯させる。

 保険金額を「再調達価額」で適切に設定する。

 地震保険も含め、トータルでリスクに備える。

これらのポイントを押さえ、あなたとご家族の暮らし、そして大切な資産を水害から守るための確かな一歩を踏み出してください。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

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