
マイホームを検討する際、多くの人が直面する最初の大きな選択が「戸建て」と「マンション」のどちらを選ぶかです。それぞれの住まい方には独自の魅力がありますが、将来的な「資産価値」という視点から見ると、それぞれ異なる特徴とリスクがあります。
一級建築士として、私は建物の構造や立地、そして長期的な視点での価値を深く理解しています。今回は、戸建てとマンションの資産価値を比較し、あなたが後悔しない選択をするためのポイントを解説します。
戸建ての資産価値:土地が価値を左右する
戸建ては、基本的に「建物」と「土地」の両方を所有します。このうち、資産価値を大きく左右するのは「土地」です。
戸建ての資産価値のメリット
土地は価値が下がりにくい: 建物は年数が経つごとに価値が下がりますが、土地は立地が良ければ価値が下がりにくく、むしろ上昇する可能性もあります。資産として最も重要なのは土地の価値と言えるでしょう。
売却や活用方法の自由度が高い: 売却する場合、土地として売ることも、家を建て替えることも、賃貸に出すことも自由にできます。再建築不可物件などの特殊なケースを除けば、建物の状態が悪くなっても、土地としての価値は残ります。
管理費・修繕積立金が不要: マンションのような月々の管理費や修繕積立金は不要です。修繕費用は都度、自分で積み立てるか、必要なタイミングで工面する必要がありますが、自身のタイミングと予算で対応できるのがメリットです。
戸建ての資産価値のデメリット
建物の価値はほぼゼロになる: 建物の価値は築20年〜30年でほぼゼロと評価されるのが一般的です。建物はあくまで「消耗品」と見なされます。
修繕費用は自己負担: 外壁や屋根の塗装、水回りの交換など、大規模な修繕費用を全て自分で負担する必要があります。
売却時の手間が多い: 買主は、建物の劣化状況(シロアリ、雨漏りなど)を厳しくチェックします。インスペクション(住宅診断)を求められることも多く、売主側にも手間とコストがかかります。
マンションの資産価値:立地と管理状態が鍵を握る
マンションの資産価値は、戸建てのように「土地」と「建物」を明確に分けられません。価値を左右するのは、主に「立地」「建物の管理状態」「建物のスペック」の3つです。
マンションの資産価値のメリット
立地による価値の維持: 駅近、商業施設が近い、利便性が高いといった好立地のマンションは、需要が高いため価値が下がりにくい傾向があります。
管理状態が保たれやすい: 管理組合によって定期的に大規模修繕が行われ、清掃も行き届いているため、建物の価値が保たれやすいです。
流動性が高い: 賃貸需要が高く、売買もしやすいため、戸建てに比べて流動性が高いと言えます。
マンションの資産価値のデメリット
建物は経年劣化する: マンションも建物である以上、築年数が経つと価値は下がります。特に、築40年を過ぎると、エレベーターの交換や配管の大規模修繕など、高額な修繕費用が必要となり、修繕積立金が大幅に上がるリスクがあります。
管理費・修繕積立金が発生する: 毎月の費用として管理費と修繕積立金の支払い義務が発生します。これは住み続ける限り続きます。
区分所有の制約: リノベーションや建て替えには管理組合の承認が必要です。自分の意思だけでは自由にできない制約があります。
建て替えの難しさ: 建て替えには全所有者の合意が必要となるため、事実上非常に困難です。
資産価値で選ぶなら?建築士の視点
どちらが良いという絶対的な答えはありませんが、資産価値という視点から見ると、選ぶ上でのポイントが明確になります。
1. 立地を最優先するなら「マンション」
「駅近」「都心」「利便性の高いエリア」に住みたいなら、マンションの方が資産価値を維持しやすい傾向にあります。特に、賃貸需要の高いエリアなら、売却しなくても貸し出すという選択肢が容易です。
2. 将来の自由度を重視するなら「戸建て」
「郊外」「広い敷地」「将来の建て替え」といった自由度を重視するなら、戸建ての方が選択肢は広がります。立地が良い土地であれば、建物が古くなっても土地の価値は残ります。
3. 資産価値を高く保つための「共通のポイント」
戸建てとマンション、どちらを選ぶにしても、資産価値を高く保つためには以下の共通のポイントが重要です。
日頃のメンテナンス: 戸建てなら外壁や屋根、マンションなら専有部分(室内)のメンテナンスを怠らないことです。
住宅性能: ZEH(ゼッチ)基準や長期優良住宅など、省エネ性や耐震性の高い住宅は、資産価値が下がりにくい傾向にあります。これは、買主が住宅ローン控除などの優遇を受けられるメリットがあるためです。
建物の状態を可視化する: 戸建ての場合はインスペクション(住宅診断)、マンションの場合は管理組合の議事録や修繕計画をチェックし、建物の状態を把握することが重要です。
まとめ:あなたのライフプランが最終的な答え
戸建てとマンションの資産価値は、それぞれ異なる魅力とリスクがあります。
戸建て: 土地の価値が中心。将来の自由度を重視するなら。
マンション: 立地と管理状態が鍵。利便性と流動性を重視するなら。
どちらを選ぶべきか、最終的な答えはあなたのライフプランと価値観によって決まります。将来どんな暮らしがしたいか、どれくらいリスクを許容できるか、そして、どちらの住まい方に魅力を感じるかをじっくりと夫婦で話し合ってみてください。私たち建築士も、第三者の専門家として、あなたの選択をサポートすることができます。
イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり