深掘り解説コラム27 / 【最新版】火災保険料の相場と、あなたの保険料を安くする方法

マイホーム購入と同時に加入が必須となる火災保険。「いくらぐらいかかるの?」「どうせなら少しでも安くしたいな」と考えるのは当然のことです。特に、近年は自然災害の増加に伴い、火災保険料は上昇傾向にあります。

一級建築士として、私は建物の構造や立地が火災保険料にどう影響するか、そして長期的に家計を守るための賢い保険選びの重要性を強く認識しています。今回は、火災保険料の相場と、あなたの保険料をできるだけ安くするための具体的な方法を解説します。

火災保険料の相場を知る:何で決まる?

火災保険料は、一概に「〇〇円」とは言えません。非常に多くの要素によって決まるため、相場を把握するには、まずその決定要因を知ることが重要です。

火災保険料は、主に以下の要素で決まります。

 建物の構造:

  M構造(マンション構造): 鉄骨・鉄筋コンクリート造のマンションなど。最も保険料が安い。

  T構造(耐火構造): 省令準耐火構造の木造住宅、鉄骨造、コンクリート造の戸建てなど。M構造の次に保険料が安い。

  H構造(非耐火構造): 上記に該当しない一般的な木造住宅など。最も保険料が高い。

  一級建築士の視点: 住宅を設計する際、省令準耐火構造(T構造)にすることで、火災保険料を大幅に安くできる場合があります。これは初期費用で多少コストがかかっても、長期的に見れば大きなメリットとなります。

 建物の所在地:

 地域ごとの災害リスク(台風、洪水、地震など)によって保険料率が異なります。特に、水災リスクの高い地域(ハザードマップで浸水想定区域など)では、水災補償を付けると保険料が高くなる傾向があります。

 建物の築年数:

  築年数が古い建物ほど、劣化リスクや再建築費用の問題から、保険料が高くなる傾向があります。

 建物の評価額(保険金額):

  建物の再建築費用(同等の建物を建て直すのに必要な費用)を基に保険金額が決まります。評価額が高いほど保険料も高くなります。

 加入する補償内容(特約):

  基本補償(火災、落雷、破裂・爆発)以外に、風災、水災、雪災、盗難、破損・汚損などの特約を付けるほど保険料は高くなります。

 保険期間:

  長期契約(最長5年)にする方が、単年契約を繰り返すよりも保険料が割安になる場合があります。ただし、保険料の一括払いが求められることがほとんどです。

免責金額(自己負担額):

  損害が発生した際に、保険会社が支払う保険金から差し引かれる自己負担額のこと。この免責金額を高く設定するほど、保険料は安くなります。

これらの要素が複雑に絡み合い、最終的な保険料が決まります。そのため、「同じような家でも、隣の家と保険料が違う」といったことも起こりえます。

あなたの火災保険料を安くする7つの具体的な方法

ここからは、あなたの火災保険料を効果的に安くするための具体的な方法を解説します。

1. 建物の構造級別を確認・変更する(T構造への配慮)

前述の通り、H構造からT構造に変えることで、火災保険料は大幅に安くなります。 特に新築を計画中の方や、リノベーションを検討している方は、設計段階で「省令準耐火構造」にできないか建築士に相談しましょう。

 ポイント: 木造住宅でも、壁の内側に石膏ボードを貼ったり、屋根に延焼防止措置を施したりすることで、省令準耐火構造にできます。初期費用はかかりますが、数十年単位で考えると元が取れる可能性が高いです。

2. 不要な特約は外す

最も分かりやすく保険料を安くする方法です。ご自身の住む地域の災害リスクを正確に把握し、本当に必要な特約に絞り込みましょう。

 ポイント:

  ハザードマップで水災リスクをチェック: 浸水想定区域外や高台に位置する場合など、水災リスクが極めて低いと判断できる場合は、水災補償を外すことを検討できます。

  盗難補償・破損汚損補償: これらは必要性をよく検討し、他の保険(家財保険など)でカバーできないか確認しましょう。

  一級建築士の視点: 私は、お客様の家の立地や建物の設計を踏まえ、過剰な補償を避けるためのアドバイスができます。

  (参考:過去コラム「火災保険の特約選び:水災、風災、雪災本当に必要なのはどれ?」)

3. 免責金額(自己負担額)を高く設定する

いざという時の自己負担額を高く設定することで、保険料を安くできます。

 ポイント: 少額の損害は自己負担すると割り切り、大きな損害に備えるという考え方です。ご自身の貯蓄状況と相談して、無理のない範囲で設定しましょう。

4. 保険期間を長期にする

最長5年の長期契約にすることで、年払いを繰り返すよりも割引が適用され、総支払額を抑えられます。

 ポイント: ただし、一括払いが基本となるため、まとまった費用が必要です。

5. 複数の保険会社を比較検討する

火災保険は、保険会社によって保険料率や補償内容が大きく異なります。

 ポイント: 必ず複数の保険会社(3社以上)から見積もりを取り、比較検討しましょう。インターネットの一括見積もりサイトを活用すると便利です。

6. 火災保険と地震保険をセットで検討する

地震保険は火災保険とセットでしか加入できません。地震保険料は建物の構造や所在地によって決まりますが、耐震等級が高い建物は割引が適用されます。

 ポイント: 新築や耐震改修を検討中の方は、耐震等級3を目指すことで、地震保険料の割引を受けられ、長期的なコストを抑えられます。

7. 損害保険料控除を活用する(2007年以前の契約)

現在、損害保険料控除は廃止されていますが、2007年以前に契約した「長期損害保険契約」については、経過措置として地震保険料控除として一部控除を受けられる場合があります。

 ポイント: 該当する場合は、年末調整や確定申告で忘れずに申告しましょう。

まとめ:賢い火災保険選びは「建物の特性」と「リスク評価」から

火災保険料を安くすることは可能ですが、「安ければ何でもいい」というわけではありません。 必要な補償を確保した上で、無駄を省くことが重要です。

 ご自身の建物の構造(特に省令準耐火の有無)を正確に把握する。

 ハザードマップで地域の災害リスクを評価し、不要な特約を外す。

 複数の保険会社を比較検討し、見積もりを取る。

これらのポイントを押さえることで、あなたの家と家計をしっかり守りつつ、最適な火災保険を選ぶことができるでしょう。建築士として、私は建物の性能を最大限に引き出し、安心かつ経済的な住まいを提供することを目指しています。ぜひ、火災保険選びも、家づくり全体の資金計画の一部として、賢く進めてください。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

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