深掘り解説コラム23 / 住宅ローンの審査に通るには? 建築士が解説する「属性」の重要性

夢のマイホーム計画を進める中で、多くの人が直面するのが「住宅ローンの審査」という大きな壁です。理想の家を建てても、ローンが組めなければ絵に描いた餅になってしまいます。特に「自分は審査に通るだろうか?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

一級建築士として、私はお客様の住宅設計だけでなく、その実現に向けた資金計画のサポートも行います。その中で痛感するのは、住宅ローン審査において、単に収入が高いか低いかだけでなく、個人の「属性」が非常に重要であるという点です。今回は、住宅ローン審査における「属性」の考え方と、審査に通るために高めておくべきポイントを詳しく解説します。

住宅ローン審査で「属性」が重要な理由

住宅ローンは、数千万円単位の大きな金額を、何十年もの長期にわたって借り入れるものです。金融機関は、その期間にわたり、滞りなく返済が続けられるかどうかを厳しく審査します。その際、最も重視されるのが、申込者一人ひとりの「属性情報」と呼ばれるものです。

「属性」とは、具体的には以下のような、申込者の返済能力や信用力を判断するための情報全般を指します。

 勤務先(会社規模、業種、勤続年数)

 雇用形態(正社員、契約社員、自営業など)

 年収(安定性、将来性)

 健康状態

 家族構成(扶養家族の有無、人数)

 年齢(申込時年齢、完済時年齢)

 金融資産(預貯金、有価証券など)

 既存の借入状況(カードローン、車のローンなど)

 信用情報(過去の返済履歴、延滞の有無など)

これらの属性情報から、金融機関は「この人は安定的に収入を得て、最後までローンを返済し続けられるか」を総合的に判断するのです。

審査通過のために高めておくべき「属性」のポイント

では、住宅ローンの審査をスムーズに通るために、どのような「属性」を高めておけば良いのでしょうか。

1. 安定した収入と長い勤続年数

これは最も基本的ながら、非常に重要な要素です。

 ポイント:

  正社員であることが最も有利です。契約社員や派遣社員、自営業の場合は、正社員に比べて審査が厳しくなる傾向があります。

  勤続年数は最低3年以上が目安とされます。転職直後よりも、同じ勤務先で長く働いている方が安定性が高いと評価されます。

  年収は高ければ高いほど有利ですが、それ以上に**「安定して継続的に得られる年収」**であることが重要です。

2. 健康状態の良好さ(特に団信加入に影響)

多くの住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)への加入が必須です。団信の審査に通らなければ、住宅ローンも組めないケースがほとんどです。

 ポイント:

  持病や既往歴がある場合、告知義務を正確に果たしましょう。虚偽の告知は、いざという時の保険金不払いの原因となります。

  団信の審査に不安がある場合は、告知項目が少ない引受基準緩和型団信や、団信加入が不要な住宅ローン(フラット35など)も検討の余地があります。ただし、これらは金利が高めに設定されることが多いので、FP(ファイナンシャルプランナー)と相談し、トータルで最適な選択をしましょう。

  (参考:過去コラム「団信(団体信用生命保険)って何? 住宅ローン契約でチェックすべきポイント」)

3. 既存の借入を整理し、信用情報をクリーンに保つ

住宅ローン以外の借入(自動車ローン、カードローン、キャッシング、携帯電話の分割払いなど)が多いと、返済比率が高くなり、審査に不利になります。

 ポイント:

  不要なカードローンやキャッシングは、申し込み前に完済・解約しておくのが鉄則です。

  クレジットカードのリボ払いなども、審査に悪影響を与える可能性があります。できる限り、残債は清算しておきましょう。

  過去に借入の延滞(クレジットカードの支払い遅延や、携帯電話料金の滞納など)がないか、ご自身の信用情報を確認しておくことも有効です。信用情報機関に開示請求することで確認できます。

4. 自己資金(頭金)をしっかり用意する

住宅ローンの審査では、自己資金の割合も重要な評価ポイントになります。

 ポイント:

  物件価格の2割程度の頭金を用意できると、審査に有利に働きます。

  頭金が多いほど借入額が減り、返済負担が軽減されるため、金融機関は「この人は無理のない計画を立てている」と評価します。

  諸費用(登記費用、仲介手数料、印紙税など)はローンに含められないことが多いため、必ず自己資金で用意しましょう。

  (参考:過去コラム「家づくりのお金、誰に相談すべき? 建築士とFPの違い」)

5. 「完済時年齢」を意識した返済計画

多くの金融機関は、住宅ローンの「完済時年齢」を80歳までと定めていますが、定年退職後の返済計画は厳しく審査されます。

 ポイント:

  定年退職までに完済できるような返済期間を設定するのが理想的です。

  難しい場合は、退職金での繰り上げ返済計画を立てるなど、具体的な返済プランを立てて金融機関に説明できるようにしておきましょう。

【建築士の視点】建物の「性能」も審査に影響する?

直接的な「属性」ではありませんが、建物の「性能」も、間接的に住宅ローン審査に影響を与えることがあります。

 高性能住宅は審査に有利な場合も:

  ZEH(ゼッチ)住宅や長期優良住宅など、省エネ性能や耐久性の高い住宅は、住宅ローン金利の優遇(フラット35Sなど)や、住宅ローン減税の優遇を受けられる可能性があります。

  金融機関によっては、高性能住宅を高く評価し、審査で有利に働いたり、より好条件のプランを提示したりするケースがあります。これは、高性能住宅は光熱費が安く、家計にゆとりが生まれやすいため、返済能力が高いと判断されるためです。

  (参考:過去コラム「ZEH住宅って何? エコな家がお金に優しい理由を解説」)

まとめ:審査は総合判断、まずは「事前審査」から

住宅ローンの審査は、個人の属性を総合的に判断して行われます。上記のポイントをできる限り高めておくことが、審査通過への近道となります。

 勤続年数や雇用形態、年収の安定性を高める。

 健康状態を正確に告知し、団信の準備をする。

 既存の借入を整理し、信用情報をクリーンにする。

 自己資金を可能な限り用意する。

 無理のない返済計画を立てる。

そして何よりも、不安があれば、まずは複数の金融機関で「事前審査(仮審査)」を受けてみましょう。事前審査は、本審査よりも簡易的ですが、現在の属性で借り入れが可能かどうかの目安を知ることができます。事前審査に通れば、本審査に進める可能性が高まり、具体的な家づくりに向けて大きな一歩を踏み出せるでしょう。

私たち建築士やファイナンシャルプランナーは、あなたの属性やライフプランに合った最適な資金計画をサポートします。ぜひ専門家を頼りながら、安心のマイホーム計画を進めてください。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

タイトルとURLをコピーしました