深掘り解説コラム24 / 不動産一括査定で失敗しない!適正価格と査定額のズレをなくすには

マイホームを売却する際、多くの人がまず利用するのが不動産一括査定サイトでしょう。複数の不動産会社からまとめて査定額が届き、手軽に物件の概算価格を知れる便利なサービスです。しかし、「査定額が高かったから、この会社に任せよう!」と安易に決めてしまうと、後悔するかもしれません。

なぜなら、不動産一括査定で提示される「査定額」は、必ずしも「実際に売れる価格(成約価格)」とイコールではないからです。時には、査定額と実際の売却価格に大きなズレが生じ、売却が長期化したり、最終的に安値で売却せざるを得なくなったりするケースもあります。

今回は、この「査定額と適正価格のズレ」が生じる理由を解説し、あなたが不動産売却で失敗しないための具体的な対策をお伝えします。

なぜ「査定額」と「適正価格」はズレるのか?

不動産会社が提示する査定額と、実際に市場で売れる適正価格には、いくつかズレが生じる要因があります。

不動産会社の戦略や思惑:

  媒介契約獲得のため: まずは高い査定額を提示して売主の気を引き、媒介契約(売却を任せる契約)を取りたいと考える会社も存在します。これを「高値査定」や「チャレンジ価格」と呼びます。

  早期売却を優先: 逆に、確実に早く売りたいという考えから、相場よりやや低めの査定額を提示する会社もあります。

 査定方法・比較物件の違い:

  不動産会社が参考にする過去の取引事例や比較物件が、会社によって異なる場合があります。似たような条件でも、参照するデータが違えば査定額も変わってきます。

  机上査定(簡易査定)か訪問査定(詳細査定)かによっても精度が変わります。机上査定はあくまで概算であり、実際に物件を見ていない分、ズレが生じやすいです。

 担当者の経験・知識:

  不動産会社の担当者の経験や、地域・物件種別への知識の深さも、査定額の精度に影響します。特にそのエリアでの売却実績が豊富な会社ほど、より正確な査定額を算出できる傾向があります。

 建物の「見えない価値」の評価:

  建物の耐震性、断熱性、省エネ性能など、目に見えない部分の価値を正しく評価できる不動産会社は限られています。これらが査定額に反映されず、適正価格とのズレが生じることがあります。

 市場の流動性やタイミング:

  不動産市場は常に変動しています。査定時点では高値に見えても、実際に売り出す頃には市場の需要が変化し、査定額通りには売れなくなることもあります。

査定額のズレをなくす!失敗しないための3つの対策

「高値査定」に惑わされず、あなたの家の適正価格を見極め、売却を成功させるためには、以下の対策が重要です。

1. 複数の査定額を比較し、「根拠」を徹底的に確認する

不動産一括査定の最大のメリットは、複数社の査定を比較できることです。最も高い査定額だけを見るのではなく、それぞれの査定額の**「根拠」**を詳しく尋ねましょう。

ポイント:

  「なぜこの価格になるのですか?」「どのようなデータに基づいて算出しましたか?」と具体的に質問しましょう。

  近隣の具体的な取引事例(いつ、どのくらいの価格で、どのような物件が売れたか)を尋ね、それがあなたの物件とどう異なるのかを説明してもらいましょう。

  査定額の内訳(土地と建物の評価額)も確認し、建物の評価が適正かどうかも考えましょう。

  高すぎる査定額には特に注意が必要です。「媒介契約を取るための釣り餌ではないか?」と疑う姿勢も大切です。

2. 自ら「売却相場」を把握する

不動産会社に任せきりにせず、売主自身も事前に売却相場を調べておくことが、査定額の妥当性を判断する上で非常に役立ちます。

 ポイント:

  国土交通省の「不動産情報ライブラリ」:過去の取引事例が公開されており、信頼性の高い情報源です。

  不動産情報サイト(SUUMO, LIFULL HOME’Sなど): 売り出し中の類似物件の価格を参考にしましょう。ただし、これは「売り出し価格」であって「成約価格」ではない点に注意が必要です。

  地域の不動産に詳しい人に相談: 不動産会社だけでなく、地域の事情に詳しい知人や専門家(建築士など)に意見を聞くのも良いでしょう。

  建築士の視点: 私たちは、建物の築年数や構造、リフォーム履歴などを考慮した上での適正な建物の価値を見積もることができます。土地と建物を合わせた全体的な資産価値について、客観的な意見を求めることも有効です。

3. 不動産会社の「質」を見極める

査定額の高さだけで会社を選ぶのではなく、その不動産会社や担当者の質を見極めることが、最終的な売却成功に繋がります。

 ポイント:

  実績と得意分野: あなたの物件と同じエリアや、戸建て・マンションといった物件種別の売却実績が豊富か。特に築年数の古い物件や、リノベーション前提の売却を得意とする会社かどうかも確認しましょう。

  提案力と販売戦略: 単に査定額を出すだけでなく、どのような販売戦略を考えているのか(広告方法、ターゲット層、内覧時の工夫など)を具体的に提案してくれるか。

  コミュニケーション: 担当者のレスポンスは速やかか、質問に丁寧に答えてくれるか、信頼できる「人」かどうかを見極めましょう。

  デメリットも伝える誠実さ: 物件のデメリットや、売却におけるリスク(売却に時間がかかる可能性、値引き交渉の可能性など)も隠さずに伝えてくれるか。

  建築士の視点: 私は、不動産会社の担当者が建物の構造や性能についてどの程度理解しているか、また、インスペクション(住宅診断)の活用を推奨するかどうかなどを重視します。これらの知識を持つ担当者は、物件の真の価値を理解し、買主にも適切にアピールできるからです。

まとめ:査定額は「比較材料」、最終決定は「納得感」で

不動産一括査定で得られる査定額は、あくまで売却活動の出発点となる「比較材料」です。そこに提示された数字だけで判断せず、その「根拠」を深く掘り下げ、あなた自身も「相場」を理解し、そして何より「信頼できる不動産会社」を見つけることが、適正価格でスムーズに売却を成功させるための鍵となります。

焦らず、複数の選択肢を比較検討し、あなたが「この会社となら、納得のいく売却ができる」と思えるパートナーと出会うまで、慎重に進めていきましょう。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

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