深掘り解説コラム20 / 家づくりで後悔しないために! 建築士が経験から語る3つの注意点

「家は3回建ててやっと理想の家ができる」――そんな言葉を耳にしたことはありませんか? これは、家づくりがいかに難しく、後悔の多いものになりがちかを表しています。しかし、一生に一度の大きな買い物であるマイホームで、そんな後悔はしたくないですよね。

一級建築士として、私はこれまで数多くのお客様の家づくりをサポートし、その中で成功事例だけでなく、残念ながら「こうすればよかった」という後悔の声も耳にしてきました。今回は、私の経験から導き出した、家づくりで後悔しないために絶対に押さえておくべき3つの注意点を解説します。この3点を意識することで、あなたの家づくりはきっと成功へと導かれるでしょう。

1. 家族の「価値観」と「ライフプラン」を共有しないまま進めてしまう

家づくりは、家族みんなの夢を形にする一大プロジェクトです。しかし、この最初のステップである家族間の「価値観」と「ライフプラン」の共有が不十分なまま進めてしまうと、後々大きな後悔につながります。

 よくある後悔の例:

  「夫(妻)は広いリビングを重視していたのに、私は収納を優先してしまい、後から不満が出た。」

  「子どもが小さい時は平屋で十分だと思ったけれど、成長して個室が必要になり、結局手狭に感じてしまった。」

  「テレワークの増加を見越して書斎を作らなかったため、今になって集中できる場所がない。」

  「夫婦間で資金に対する考え方にズレがあり、予算オーバーで揉めてしまった。」

 建築士が語る注意点:

  「漠然としたイメージ」で進めないこと。 雑誌の切り抜きやSNSの画像を見せるだけでは不十分です。「なぜこのテイストがいいのか」「この空間で何をしたいのか」といった具体的な目的や理由を深く話し合いましょう。

  将来の変化を具体的に予測すること。 家族構成、働き方、趣味、親の介護など、5年後、10年後、20年後のライフスタイルを具体的に想像し、それに柔軟に対応できる間取りや設備を検討することが重要です。

  「言わなくてもわかるだろう」はNG お互いの考えや希望は言葉にして伝え合い、文書に残すくらい明確に共有しましょう。特に、お金に関する考え方や、何を優先して何を諦めるのかという「優先順位」は、早い段階で摺り合わせが必要です。

2. 「見た目」ばかりにこだわり、「性能」と「維持コスト」を軽視してしまう

「おしゃれな家にしたい」「流行のデザインを取り入れたい」という気持ちは、家づくりにおいて非常に大切です。しかし、「見た目」ばかりにこだわり、建物の「性能」や「維持コスト」を軽視してしまうと、建てた後に後悔することになります。

 よくある後悔の例:

  「デザイン重視で窓を大きくしたら、夏は暑く冬は寒くて、光熱費が跳ね上がった。」

  「初期費用を抑えるために断熱材のグレードを下げたら、結露がひどくてカビに悩まされている。」

  「外壁のデザイン性を優先したら、メンテナンス費用が予想以上に高額になった。」

  「耐震性ばかりに目が行き、災害時の停電対策や断水対策を怠ってしまった。」

 建築士が語る注意点:

  「高性能住宅」は初期投資ではなく「未来への投資」と捉えること。 高断熱・高気密、高い耐震性(耐震等級3など)は、初期費用が多少高くなっても、長期的に見れば光熱費の削減、健康的な暮らし、災害時の安心、そして住宅ローンや保険料の優遇など、経済的・精神的なメリットがはるかに大きいことを理解しましょう。

   (参考:過去コラム「ZEH住宅って何? エコな家がお金に優しい理由を解説」)

   (参考:過去コラム「【建築士が解説】高性能住宅が、なぜ住宅ローン金利に有利なのか?」)

  「維持コスト」を事前に把握すること。 外壁や屋根材の耐久年数、設備の交換サイクル、定期的なメンテナンス費用などを事前に確認し、将来の出費を織り込んだ資金計画を立てましょう。安価な建材や設備は、初期費用は安くても、維持費が高くつく可能性があります。

  デザインと性能のバランスを建築士と徹底的に議論すること。 経験豊富な建築士は、あなたの希望するデザインを実現しつつ、最高の性能と将来の維持コストを考慮した提案ができます。「おしゃれ」と「快適・経済性」は両立できることを知ってください。

3. 「専門家選び」を安易に済ませてしまう

家づくりは、専門知識を必要とする複雑なプロセスです。にもかかわらず、依頼先の「専門家選び」を安易に済ませてしまうと、後悔の引き金になりかねません。

 よくある後悔の例:

  「知人の紹介だからと深く調べずに頼んだら、担当者との相性が悪く、途中で不信感が募ってしまった。」

  「提示された価格だけを見てハウスメーカーを決めたら、打ち合わせの度にオプション料金が増えて予算オーバーした。」

  「予算が厳しいことを伝えられず、結局希望とは違う家になってしまった。」

  「建物の構造や性能について質問しても、納得のいく説明が得られなかった。」

 建築士が語る注意点:

  複数の依頼先(ハウスメーカー、工務店、設計事務所など)を比較検討すること。 それぞれに得意分野や特徴、価格帯が異なります。最低でも3社程度から話を聞き、ご自身の要望と合うかどうか、担当者との相性はどうかをじっくり見極めましょう。

  「人」で選ぶことの重要性。 家づくりは担当者との二人三脚です。専門知識はもちろんのこと、あなたの話に耳を傾け、的確なアドバイスをくれるか、信頼できる「人」に出会えるかが非常に重要です。

  不明点や疑問点は、どんな小さなことでも質問し、納得するまで説明を求めること。 「こんなこと聞いたら悪いかな」と遠慮する必要はありません。専門家は、依頼主の不安を取り除くのが仕事です。特に、資金計画や契約内容については、曖昧なまま進めないようにしましょう。

  プロのセカンドオピニオンも視野に入れること。 契約前に、別の建築士やFP(ファイナンシャルプランナー)に相談し、プランや資金計画の妥当性について意見を聞くのも賢明な方法です。

まとめ:後悔しない家づくりは「情報収集」と「対話」から

家づくりで後悔しないためには、これら3つの注意点を心に留めておくことが重要です。

 家族間で「価値観」と「ライフプラン」を徹底的に共有し、ブレない軸を作る。

 「性能」と「維持コスト」の重要性を理解し、初期費用だけでなく長期的な視点で考える。

 信頼できる「専門家」を慎重に選び、納得いくまで「対話」を重ねる。

家づくりは、不安なことも多いかもしれませんが、適切な情報収集と、プロとの密なコミュニケーションを通じて、必ず成功させることができます。私たちは、建築の専門家として、あなたの夢の実現を全力でサポートします。ぜひ、これらのポイントを参考に、後悔のない素晴らしい家づくりを始めてください。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

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