深掘り解説コラム19 / 中古住宅購入+リノベーションの資金計画:ローン選びのコツ

近年、理想の住まいを手に入れる方法として、「中古住宅購入+リノベーション」という選択肢が注目されています。新築では手の届かない立地や広さを手に入れられる魅力がある一方で、資金計画、特に「ローン選び」においては、新築とは異なる複雑さが伴います。

一級建築士として、私は中古物件のポテンシャルを見極め、リノベーションで価値を高める提案をしていますが、同時に、お客様が資金面で後悔しないよう、適切なローン選びの重要性も強く感じています。今回は、中古住宅購入とリノベーションを一体で進める際の資金計画と、ローン選びのコツを詳しく解説します。

なぜ「中古+リノベーション」はローンが複雑になりがちなのか?

中古住宅購入とリノベーションの資金計画が複雑になる主な理由は、以下の2点です。

 物件価格とリノベーション費用が別々に発生する:

   通常の住宅ローンは、新築や中古の「物件購入費」に対して組むのが一般的です。しかし、リノベーション費用は別途発生するため、これをどう賄うかが課題になります。

 融資のタイミングと担保評価:

   リノベーションは物件購入後に工事が始まるため、リノベーション費用分の融資が物件引き渡し後にしか受けられないケースや、工事内容によっては担保評価が上がりにくいケースがあるため、つなぎ融資や別途ローンの検討が必要になる場合があります。

資金計画の基本:3つの方法とローン選びのコツ

中古住宅購入とリノベーションの資金計画には、主に3つの方法があります。それぞれの方法に合わせたローン選びのコツを見ていきましょう。

1. リノベーション一体型ローン(リフォーム一体型ローン)

これが最も推奨される方法です。物件購入費用とリノベーション費用をまとめて借りられる住宅ローンです。

 特徴:

  一つのローンで済むため、手続きがシンプル。

  金利が住宅ローン金利と同じ低金利で借りられる。

  リノベーション費用部分も住宅ローン減税の対象になりやすい。

 ローン選びのコツ:

  取扱金融機関を確認する全ての金融機関が一体型ローンを提供しているわけではありません。まずは一体型ローンを取り扱っているか確認しましょう。

  リノベーション費用の融資上限額金融機関によって、リノベーション費用として借り入れできる金額に上限が設けられている場合があります。希望するリノベーション内容と合致するか確認が必要です。

  担保評価の基準リノベーション後の建物の価値をどのように評価し、それが融資額にどう影響するかを確認しましょう。性能向上リノベーション(耐震性向上、断熱性向上など)を行う場合、金融機関によっては評価が上がり、より有利な条件で借りられる可能性があります。

  融資実行のタイミングリノベーション工事の進捗に合わせて融資が実行される場合があります。つなぎ融資の要否や手数料も確認しましょう。

 建築士の視点一体型ローンを組むには、リノベーション計画が明確であることが求められます。建築士は、具体的なリノベーションプランや見積もりを作成し、金融機関への提出資料をサポートできます。また、性能向上が担保評価にどう影響するか、金融機関と連携して確認することも可能です。

2. 住宅ローン  リフォームローン(または多目的ローン)

物件購入は住宅ローン、リノベーション費用は別途リフォームローンや多目的ローンで賄う方法です。

 特徴:

  住宅ローンとリフォームローンで金利や返済期間が異なることが多い。

  リフォームローンは住宅ローンに比べて金利が高めに設定される傾向がある。

  リフォームローンは無担保型と有担保型があり、無担保型は審査が比較的早いが高金利。

  住宅ローン減税の対象外になるリフォームローンもあるため注意が必要。

 ローン選びのコツ:

  金利と総返済額を比較リフォームローンの金利が住宅ローンと比べてどれくらい高いのか、総返済額でシミュレーションし、負担を把握しましょう。

  返済期間リフォームローンは住宅ローンより返済期間が短いことが多いため、毎月の返済額が高くなる可能性があります。

  住宅ローン減税の適用可否リフォームローンで借りた部分が住宅ローン減税の対象になるか、税務署やFPに確認しましょう。一般的に、リノベーション内容が一定の要件(増改築、耐震改修、省エネ改修など)を満たす必要があります。

 建築士の視点住宅ローン減税の対象となるリノベーション工事の要件は、建物の性能に関する基準が設けられている場合があります。建築士は、その基準を満たすためのリノベーションプランを提案し、必要な証明書の発行をサポートできます。

3. 自己資金でリノベーション費用を賄う

物件購入は住宅ローン、リノベーション費用は貯蓄などの自己資金で支払う方法です。

 特徴:

  金利負担がなく、総支払額を最も抑えられる。

  資金繰りがシンプル。

 ローン選びのコツ:

  手元資金のバランスリノベーション費用を全て自己資金で賄うことで、急な出費に対応できる予備費が減ってしまわないか、慎重に判断しましょう。特に、中古住宅は購入後に予期せぬ修繕が必要になる可能性もあるため、ある程度の予備費は残しておくべきです。

  住宅ローン減税の活用自己資金を使わず、ローンを組んだ方が住宅ローン減税の恩恵を大きく受けられる場合もあります。FPに相談し、総合的なメリット・デメリットを比較検討しましょう。

 建築士の視点リノベーション費用を抑えつつ、最大限の価値を引き出すための設計提案が可能です。予算内でどこまで性能を向上できるか、費用対効果の高いリノベーションプランを提案できます。

賢いローン選びの共通のコツ

上記3つの方法に共通して言える、賢いローン選びのコツは以下の通りです。

 複数の金融機関を比較検討する一体型ローン、リフォームローンともに、金利、手数料、審査基準、融資条件が金融機関によって大きく異なります。必ず複数社のプランを比較しましょう。

 住宅の「性能向上」を意識するリノベーションで耐震性、断熱性、省エネ性などを高めることで、住宅ローン金利優遇(フラット35Sなど)や、住宅ローン減税の対象となる可能性が高まります。これは長期的な返済負担を大きく軽減します。

  一級建築士の視点どのようなリノベーションでどの程度の性能向上(例:耐震等級3、断熱等性能等級4以上など)が可能か、必要な証明書は何かをアドバイスできます。

 専門家と連携する不動産会社、リノベーション会社(建築士)、金融機関、そしてFP(ファイナンシャルプランナー)が連携し、あなたの状況に最適な資金計画をサポートしてくれる体制を築くことが、失敗しないための最も重要なポイントです。

まとめ:後悔しない「中古+リノベーション」のために

中古住宅購入+リノベーションは、無限の可能性を秘めた魅力的な家づくりの形です。しかし、その実現には、通常の家づくり以上に「資金計画」と「ローン選び」が重要になります。

  「リノベーション一体型ローン」をまず検討する。

 金融機関ごとの融資条件、特にリノベーション費用の上限や担保評価基準を確認する。

  リノベーションによる「性能向上」が、金利優遇や税制優遇に繋がることを意識し、計画に組み込む。

 建築士とFPと連携し、専門家のアドバイスを最大限に活用する。

これらのポイントを押さえることで、あなたの理想とする「中古+リノベーション」の家づくりが、資金面でも後悔のない、賢い選択となるでしょう。このサイトでは、建築士の視点から、中古住宅のリノベーションについても様々な情報を提供していきますので、ぜひ参考にしてください。

イエシール / 家を建てようと思ったら、一級建築士と賢く家づくり

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