深掘り解説コラム13 / 変動金利 vs 固定金利:建築士が教えるあなたの最適な選び方

住宅ローンを組む際、多くの人が最初に直面する大きな選択が「変動金利」と「固定金利」のどちらを選ぶか、という問題です。この選択は、毎月の返済額から総返済額、そして将来の家計にまで大きな影響を与えるため、非常に重要です。

「金利のプロは金融機関では?」と思われるかもしれませんが、一級建築士として、私は建物の性能が金利優遇にどう影響するか、そして長期的な家計における返済計画の重要性を理解しています。今回は、あなたのライフプランに最適な金利タイプを見つけるための考え方を、建築士の視点も交えながら解説します。

住宅ローンの金利タイプ、基本をおさらい

まずは、前回もおさらいした2つの主要な金利タイプとその特徴を再確認しましょう。

 変動金利型

  特徴: 半年ごとに金利が見直される。市場金利の動きに連動し、金利が上下する。

  メリット: 現在の低金利環境下では、毎月の返済額が最も低くなる可能性が高い。金利が下がればさらに返済額が減る。

  デメリット: 金利が上昇すると返済額も増えるリスクがある。将来の返済額が不確定。

 固定金利型(全期間固定金利型と固定金利選択型)

  全期間固定金利型: 借入期間中、ずっと金利が変わらない。

  固定金利選択型: 3年、5年、10年などの一定期間だけ金利が固定され、期間終了後に再度金利タイプを選択する。

  メリット: 金利が変動しないため、毎月の返済額が確定し、返済計画が立てやすい。将来の金利上昇リスクを回避できる。

  デメリット: 変動金利型に比べて金利が高めに設定される傾向がある。市場金利が下がってもその恩恵を受けられない。

あなたに最適な金利タイプは? 3つのチェックポイント

どちらの金利タイプがあなたにとって最適かは、個人の「経済状況」「ライフプラン」「リスク許容度」によって異なります。以下の3つのチェックポイントで考えてみましょう。

1. 「金利上昇リスク」をどこまで許容できるか?

住宅ローン選びで最も重要なのが、金利上昇リスクに対する考え方です。

 変動金利が向いている人:

  金利上昇リスクを理解し、ある程度許容できる。

  手元に十分な貯蓄があり、金利が上がっても繰り上げ返済で対応できる経済的な余裕がある。

  将来的に収入が増える見込みがあり、返済能力に自信がある。

  金利の動向を定期的にチェックし、必要に応じて借り換えなどの対策を検討できる。

  短期間で完済する予定がある(例:退職金で一括返済など)。

 固定金利が向いている人:

  金利上昇リスクを絶対に避けたい。

  毎月の返済額がずっと変わらない「安心感」を最も重視する。

  子どもの教育費など、将来的に大きな出費が控えており、家計の変動リスクを避けたい。

  金利の動向を常にチェックする時間がない、あるいは苦手。

  収入が安定しており、変動リスクを負いたくない。

2. 「ライフプラン」はどうか? 将来のイベントを予測する

あなたの人生計画も、金利タイプを選ぶ上で重要な要素です。

 変動金利が向いている人:

  近いうちに転職や独立の予定がなく、収入が安定している。

  家族構成の変化(出産など)が一段落し、当面の間、家計の大きな変動が見込まれない。

  借り換えなども含め、ライフイベントに合わせて柔軟にローンを見直せる。

 固定金利が向いている人:

  数年以内に子どもの入学や親との同居など、大きなライフイベントを控えている。

  教育費のピークなど、将来的に家計が厳しくなる時期が明確に予測できる。

  将来の収入が不透明な部分があり、返済額の確定を優先したい。

例えば、お子さんの教育費が最もかかる時期に金利が上昇し、返済額が増えるといった事態は避けたいものです。固定金利であれば、その期間の返済額が確定しているため、家計管理が非常に楽になります。

3. 「住宅性能」と「金利優遇」を最大限に活用できるか?

ここで、一級建築士としての視点を強く加えます。住宅の「性能」は、金利タイプ選びだけでなく、実質的な総返済額に大きな影響を与えます。

 高性能住宅(耐震等級3、省エネ基準適合、ZEH水準、長期優良住宅など)を選ぶことのメリット:

 フラット35Sの金利優遇: 全期間固定金利型の代表格であるフラット35Sでは、これらの高性能住宅に対して、当初5年または10年の金利引き下げが適用されます。これにより、固定金利を選んでも、変動金利に近い低金利でスタートできる可能性があります。

 光熱費の削減: 高性能住宅は、冷暖房費などのランニングコストを大幅に削減できます。これにより、家計にゆとりが生まれ、結果的にローン返済に充てられる金額が増える、または万が一の金利上昇時にも対応しやすくなります。

 資産価値の維持: 高性能住宅は、将来的な資産価値も高く評価されやすいため、金融機関からの担保評価も有利になり、結果的に金利交渉に影響を与える可能性もあります。

ポイント:

 高性能住宅の取得を検討している場合は、固定金利型の【フラット35S】の優遇金利を必ずチェックしましょう。これにより、固定金利でありながら魅力的な金利でローンを組むことが可能になります。

 ランニングコスト(光熱費)削減による家計のゆとりも、実質的な「返済余力」として考慮に入れましょう。

まとめ:後悔しないために「プロ」と「シミュレーション」を

変動金利と固定金利、どちらが正解という万能な答えはありません。重要なのは、ご自身の状況を客観的に見つめ、将来のリスクとメリットを慎重に比較検討することです。

  ご自身の「リスク許容度」を明確にする。

  将来の「ライフプラン」を具体的に予測する。

 「住宅の性能」とそれによる金利優遇を最大限に活用する。

そして何より、一人で悩まずに、ファイナンシャルプランナー(FP)と住宅会社または建築士の両方の専門家からアドバイスを受けることを強くおすすめします。複数の金融機関で金利シミュレーションを行い、納得がいくまで比較検討することで、後悔のない最適な住宅ローン選びができるはずです。

このサイトでは、建築士の視点から、建物の性能と金融商品の関係について深く掘り下げていきます。ぜひ今後の記事も参考に、あなたの未来を守る家づくりと資金計画を進めてください。

イエシール / 一級建築士と賢く家づくり

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