深掘り解説コラム12 / 【税制優遇】住宅ローン控除を最大限に活用するポイント

マイホームの購入は人生の一大イベントですが、その際にぜひ知っておきたいのが「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」という強力な税制優遇制度です。この制度を上手に活用することで、住宅ローンの返済負担を大きく軽減し、家計にゆとりをもたらすことができます。

しかし、住宅ローン控除は適用要件が複雑で、「なんだか難しそう」と感じる方も少なくありません。一級建築士として、多くの家づくりを見てきた私が、この制度を最大限に活用するためのポイントを分かりやすく解説します。

住宅ローン控除とは?その仕組みを理解しよう

住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高に応じて所得税(住民税の一部も)が控除される制度です。簡単に言えば、「住宅ローンを組んで家を買ったら、税金が安くなる」という、国がマイホーム取得を支援するための制度です。

基本的な仕組み:

 控除額: 住宅ローンの年末残高の一定割合(原則0.7%)が所得税から控除されます。

 控除期間: 住宅の種別や入居時期によって10年間または13年間適用されます。

 対象借入限度額: 住宅の種類(省エネ性能など)によって、控除の対象となるローンの上限額が異なります。

この制度は、所得税を直接減らしてくれるため、非常に大きなメリットがあります。例えば、年間20万円の控除が受けられれば、10年間で200万円、13年間なら260万円もの節税になる可能性があります。

最大限に活用するためのポイント5

住宅ローン控除を最大限に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。

1. 入居時期と対象住宅の種類を把握する

住宅ローン控除の控除額や控除期間は、「いつ入居したか」と「どんな種類の住宅か」によって変わります。特に注意したいのが、2024年以降の入居分から省エネ基準を満たさない住宅は原則として控除の対象外となる点です。

 長期優良住宅・低炭素住宅: 最も優遇された借入限度額が設定されており、控除額も大きくなります。

 ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅: 一般の住宅よりも優遇されます。

 その他の住宅: 2024年以降の入居では原則として控除対象外、または借入限度額が大幅に引き下げられます。

ポイント:

 新築・購入する住宅がどの省エネ基準に適合するかを建築会社や不動産会社に確認する。

 特に2024年以降に入居する場合は、省エネ基準適合住宅以上であることが節税の鍵となる。

2. 住宅の「性能」を高めることで控除額を増やす

この点が、一級建築士である私が最も強くお伝えしたいポイントです。

実は、住宅の省エネ性能や認定基準が高いほど、住宅ローン控除の「対象となる借入限度額」が大きくなります。

住宅の種類 | 2024年・2025年入居の借入限度額(新築・買取再販) |

|—|—|

長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 |

| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 |

省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 |

その他の住宅 | 0円(特例で2,000万円) |

2024年度の制度概要であり、年度によって変更される場合があります。

※「その他の住宅」は、2023年末までに建築確認を受けた場合に限る等の特例あり。

このように、例えば長期優良住宅であれば、一般の省エネ基準適合住宅よりも借入限度額が1,000万円も高くなります。これにより、控除される税額も当然大きくなるため、初期の建築費用が多少上がっても、長期的な節税メリットで十分元が取れる可能性があります。

ポイント:

 家づくりの段階で、長期優良住宅やZEH水準、省エネ基準適合住宅の取得を積極的に検討する。

 これらの性能を持つことで、住宅ローン金利優遇(フラット35Sなど)や火災・地震保険料割引など、他の経済的メリットも享受できる点を考慮に入れる。

3. 住宅ローン以外の諸費用も確認する

住宅ローン控除の対象となるのは、原則として住宅取得のための借入金のみです。諸費用(登記費用、仲介手数料、引越し費用など)は控除の対象外となるため、これらは自己資金でまかなうのが基本です。無理な借り入れは、控除額を増やすどころか、返済負担を重くするだけなので注意が必要です。

4. 初年度は「確定申告」が必須

住宅ローン控除を初めて適用する年は、必ず確定申告が必要です。会社員の方も、初年度だけは税務署で手続きを行いましょう。

2年目以降は、年末調整で手続きが可能になります。

確定申告で必要な主な書類:

 源泉徴収票

 住民票の写し

 建物の登記事項証明書、工事請負契約書・売買契約書の写し

 住宅ローンの残高証明書

 (高性能住宅の場合)性能証明書(長期優良住宅認定通知書、ZEH証明書など)

不明な点があれば、税務署や税理士、あるいは住宅会社の担当者に相談しましょう。

5. 繰り上げ返済のタイミングを慎重に検討する

住宅ローン控除は、年末のローン残高が少ないと控除額も少なくなります。そのため、控除期間中(10年または13年)に多額の繰り上げ返済を行うと、控除のメリットを最大限に受けられなくなる可能性があります。

ポイント:

繰り上げ返済を検討する際は、住宅ローン控除の残り期間と、控除される金額を考慮に入れる。

控除期間終了後に繰り上げ返済を行う、あるいは、控除額への影響が少ない返済方法(期間短縮型か返済額軽減型かなど)をシミュレーションして検討する。

まとめ:賢い家づくりは「節税」から

住宅ローン控除は、国が用意した非常に手厚い節税制度です。この制度を最大限に活用できるかどうかで、総支払額が大きく変わってきます。

ご自身の住宅がどの省エネ基準に該当するかを必ず確認する。

可能であれば、長期優良住宅やZEH水準の住宅を検討し、控除額を最大化する。

初年度の確定申告は忘れずに行う。

繰り上げ返済は、控除期間との兼ね合いを慎重に検討する。

これらのポイントをしっかり押さえることで、家づくりの経済的負担を軽減し、より豊かな暮らしを実現できるはずです。住宅ローン控除に関する不明点があれば、税理士や専門家にも相談し、確実にメリットを享受しましょう。このサイトでも、引き続き家計に優しい家づくりに関する情報を提供していきます。

イエシール / 一級建築士と賢く家づくり

タイトルとURLをコピーしました