深掘り解説コラム11 / ZEH住宅って何? エコな家がお金に優しい理由を解説

最近、住宅業界でよく耳にするようになった「ZEH(ゼッチ)住宅」という言葉。耳にはするけれど、具体的にどんな家なのか、そしてなぜ「エコ」なだけでなく「お金に優しい」と言われるのか、いまいちピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

一級建築士として、私はこのZEH住宅こそが、これからの「未来に安心な家づくり」の主流になると確信しています。今回は、ZEH住宅の基本的な仕組みと、それがあなたの家計にどのようなメリットをもたらすのかを、分かりやすく解説していきます。

ZEH(ゼッチ)住宅とは?「省エネ」と「創エネ」でエネルギー収支ゼロを目指す家

ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の頭文字を取った略称です。簡単に言えば、「家庭で使う年間の一次エネルギー消費量を、再生可能エネルギーで創り出すエネルギーで賄い、その収支を概ねゼロにする家」のことです。

ZEH住宅を実現するためには、大きく分けて次の2つの要素が重要になります。

「省エネ」の追求:

高断熱・高気密: 魔法瓶のように外の暑さや寒さを室内に伝えにくくし、冷暖房に使うエネルギーを最小限に抑えます。具体的には、高性能な断熱材やサッシ、ドアなどを採用し、隙間なく施工することで実現します。

高効率な設備導入: 冷暖房設備、給湯器、換気システム、照明など、エネルギー効率の高い設備を選ぶことで、消費エネルギーを削減します。

「創エネ」の導入:

太陽光発電システム: 太陽の光を利用して電気を創り出すシステムを導入し、自宅で消費するエネルギーの一部、あるいは全てを自給自足できるようにします。

これら「省エネ」と「創エネ」の組み合わせによって、年間のエネルギー消費量を正味ゼロ以下にすることを目指すのがZEH住宅なのです。

エコな家が「お金に優しい」理由

ZEH住宅は、地球環境に優しいだけでなく、住む人の家計にも大きなメリットをもたらします。その理由は主に以下の4点です。

1. 光熱費を大幅に削減できる

ZEH住宅の最大のメリットは、何と言っても光熱費の大幅な削減です。

高断熱・高気密により、冷暖房効率が格段に向上するため、エアコンなどの使用頻度や設定温度を抑えられます。

高効率な設備は、同じ性能を発揮するのに必要なエネルギーが少ないため、消費電力量を抑えられます。

そして、太陽光発電で自家消費する分、電力会社から購入する電気量を減らせます。余った電気は売電することも可能で、これが家計のプラスになります。

長期的に見れば、毎月の光熱費負担が大幅に軽減されるため、経済的なメリットは計り知れません。昨今の電気代高騰を考えれば、この恩恵はさらに大きくなるでしょう。

2. 国からの「補助金」を受け取れる可能性がある

ZEH住宅の普及は国の重要な政策目標の一つです。そのため、ZEH基準を満たす住宅を新築または購入する場合、国や自治体から補助金を受け取れる制度が用意されています。

補助金制度は年度によって内容が変動しますが、例えば2024年度(令和6年度)においても、ZEH住宅の普及を目的とした補助金事業が実施されています。これらの補助金を活用することで、ZEH住宅の初期費用の一部をまかなうことができ、導入へのハードルを下げることが可能です。補助金の金額や要件は年度や事業によって異なるため、常に最新情報を確認することが重要です。

3. 住宅ローン金利の優遇を受けられる

ZEH住宅は、その高い省エネ性能が評価され、住宅ローンの金利優遇の対象となることがあります。

代表的なのが、住宅金融支援機構の【フラット35S(金利Aプラン)】です。ZEH基準を満たす住宅は、このフラット35Sの対象となり、当初10年間、金利が引き下げられます。数千万円の住宅ローンにおいて、この金利優遇は総返済額に大きな影響を与えます。金融機関から見ても、光熱費が削減され家計にゆとりが生まれるZEH住宅は、返済能力が高いと判断されやすく、優良な融資対象と見なされるのです。

4. 災害時にも電気を使える「安心」と資産価値の向上

太陽光発電システムに加え、蓄電池を導入すれば、災害による停電時でも、蓄えた電力である程度の電力をまかなうことができます。これは、非常時の生活を支える大きな安心材料となります。

また、ZEH住宅は「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」などで高い評価を得られるため、住宅の資産価値が高く見積もられやすくなります。将来、もし住宅を売却することになった場合にも、省エネ性能の高いZEH住宅は買い手から高く評価され、高値で取引される可能性が高まります。

まとめ:ZEH住宅は「未来の当たり前」

ZEH住宅は、初期費用が一般的な住宅より高くなる傾向があるのは事実です。しかし、月々の光熱費削減、補助金の活用、住宅ローン金利優遇、そして災害時の安心と将来の資産価値向上といった経済的なメリットを総合的に考えれば、決して「高い買い物」ではありません。むしろ、「長期的に見て家計に優しく、持続可能な暮らしを実現する賢い投資」であると言えるでしょう。

2025年からは、全ての新築住宅に省エネ基準への適合が義務化されるなど、ZEH水準の家づくりは今後「当たり前」になっていきます。

一級建築士として、私たちは皆さんに、環境にも家計にも優しいZEH住宅を積極的に検討することをおすすめします。このサイトでは、ZEHに関するさらに詳しい情報や、補助金・優遇制度の最新情報なども提供していきますので、ぜひ参考に、あなたの未来を守る家づくりを始めてください。

イエシール / 一級建築士と賢く家づくり

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