深掘り解説コラム10 / 家づくりのお金、誰に相談すべき? 建築士とFPの違い

夢のマイホームを実現する上で、切っても切り離せないのが「お金」の問題です。住宅ローン、頭金、諸費用、税金、そして建てた後の維持費考えるべきことが多すぎて、「一体誰に相談すればいいんだろう?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。

特に、「家づくり」という視点で見ると、一級建築士とファイナンシャルプランナー(FP)のどちらに相談すべきか迷うことがあるかもしれません。この二つの専門家は、それぞれ異なる強みを持っています。今回は、それぞれの役割と得意分野を明確にし、あなたの家づくりのお金に関する悩みを誰に相談すべきか、その選び方について解説します。

一級建築士:家を建てる「プロ」としての資金計画アドバイス

一級建築士は、文字通り「建築のプロフェッショナル」です。建物の設計、構造、性能、法規、そして施工監理まで、家づくりのあらゆる技術的な側面を専門としています。

建築士に相談すべき「お金」の視点

建築士は、単にデザインや間取りを考えるだけでなく、「あなたの理想とする家が、予算内で実現可能か」という視点から、現実的な資金計画のアドバイスができます。

建築費の適正性判断: 提示された見積もりが適正か、無駄なコストがないか、コストを抑えつつも性能を維持する方法(例えば、間取りの工夫や材料の選び方)などを提案できます。

住宅性能とコストのバランス: 高断熱・高気密、耐震等級3といった高性能住宅が、初期費用と将来の光熱費削減、そして住宅ローン金利優遇や保険料割引にどう影響するかなど、長期的な視点でのコストメリットを説明できます。

維持管理コストの予測: 建てた後のメンテナンス費用や修繕計画を考慮したアドバイスができます。例えば、外壁材の種類が将来の塗り替え費用にどう影響するかなど、維持管理の視点からのコスト提案も可能です。

税制優遇との関連: 長期優良住宅やZEH住宅など、特定の性能を満たすことで受けられる住宅ローン減税や不動産取得税の軽減といった税制優遇についても、建物の仕様と絡めて説明できます。

つまり、建築士は、「建物本体にかかる費用」や「建物の性能が将来の費用にどう影響するか」に関して、最も専門的な視点からアドバイスを提供できる存在です。

ファイナンシャルプランナー(FP):人生全体を見据えた「お金」の専門家

ファイナンシャルプランナー(FP)は、個人のライフプラン(人生設計)に基づき、資産運用、保険、年金、税金、住宅ローンなど、お金に関するあらゆる側面から最適な計画を立てることを専門としています。

FPに相談すべき「お金」の視点

FPは、家づくりにかかる費用だけでなく、「家計全体として、住宅購入が人生にどう影響するか」という、より広い視点からアドバイスを提供します。

ライフプランに基づいた予算策定: 現在の収入・支出はもちろん、将来の教育費、老後の資金、車の買い替えなど、住宅購入以外のライフイベントも考慮に入れた上で、無理のない住宅購入の総予算を算出します。

住宅ローンの選び方: 多数ある金融機関の中から、あなたの家計状況やリスク許容度に合わせた最適な金利タイプ(変動、固定など)や返済期間、借入額などを具体的にシミュレーションし、比較検討をサポートします。

保険の見直し: 団体信用生命保険(団信)の必要性や、既存の生命保険、医療保険などを含めた保険全体の適切な見直しを提案します。

税金対策: 住宅ローン減税(控除)や不動産取得税、固定資産税など、住宅購入や保有にかかる税金について詳しく解説し、節税対策をアドバイスします。

資産形成・運用: 住宅購入後の貯蓄計画や、老後の資金形成など、長期的な視点での資産運用全般について相談に乗ります。

FPは、「あなたの家計全体、そして人生全体から見た、住宅購入の最適解」を導き出すことを得意としています。

結局、どちらに相談すべき?

結論から言うと、家づくりのお金に関する相談は、建築士とFPの「両方に相談する」のが最も賢明な選択です。

家づくりの初期段階(予算の目安を知りたい、理想の家がいくらで建つか知りたい時): まずはFPに相談し、ご自身の現在の家計状況や将来のライフプランから、無理なく借り入れできる金額や自己資金の目安を把握しましょう。これにより、家づくりの「総予算」が明確になります。

具体的な建物の計画段階(見積もりが適正か、性能とコストのバランスを知りたい時): 建築士に相談し、FPが出してくれた総予算の範囲内で、どんな家が建てられるのか、どの部分に費用をかけるべきか、コストを抑える工夫はないかなど、建築的な視点から具体的なアドバイスをもらいましょう。

ローン契約前や、ライフイベントの変化時: 再度FPに相談し、建築士と詰めた建物のプランや建築費を基に、最終的な住宅ローンのシミュレーションや、最適な金融機関選びのアドバイスを受けましょう。

理想的には、家づくりの早い段階で、信頼できるFPと建築士を見つけ、両者が連携してあなたの家づくりをサポートしてくれる体制を築くことです。これにより、資金面での不安を解消し、安心して夢のマイホーム実現へと進むことができるでしょう。

このサイトでは、一級建築士の視点から、建物の性能とお金の関係、そして災害リスクへの備えといった情報を提供しています。FPとの連携も視野に入れつつ、ぜひ賢い家づくりを進めてください。

イエシール / 一級建築士と賢く家づくり

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