深掘り解説コラム3 / 【必読】高騰する建築費に負けない!賢い資金計画の立て方

近年、ウッドショックや世界情勢の変化、そして円安の影響などにより、建築費の高騰が続いています。夢のマイホームを計画している方にとって、「予算内で理想の家を建てられるのか?」という不安は、切実な問題ではないでしょうか。

しかし、ご安心ください。建築費が高騰している今だからこそ、「賢い資金計画」が家づくりの成功を左右する鍵となります。一級建築士として、多くの家づくりに携わってきた経験から、高騰する建築費に負けないための具体的な資金計画の立て方を解説します。

建築費高騰の背景を理解する

まず、なぜ建築費が高騰しているのか、その背景を簡単に理解しておきましょう。主な要因は以下の通りです。

資材価格の高騰木材、鉄骨、セメント、住宅設備機器など、あらゆる建材の価格が世界的に上昇しています。

物流コストの増加原油価格の高騰により、輸送費も上昇しています。

人件費の上昇建築業界における人手不足も相まって、人件費も増加傾向にあります。

為替レートの影響円安は、輸入資材や海外製品の価格を押し上げる直接的な要因となります。

これらの複合的な要因により、数年前と比べて同じ家を建てようとしても、総費用が大幅に上がってしまうのが現状です。

賢い資金計画の3つの柱

建築費高騰に立ち向かうには、以下の3つの柱を意識した資金計画が重要です。

1.「総予算」を明確にする

2. 「費用の内訳」を把握し、優先順位をつける

3.「住宅ローン」を戦略的に活用する

1. 「総予算」を明確にする:借りられる額ではなく、返せる額で考える

家づくりを始める前に、まず「家づくりにかけられる総額」を明確にすることが最も重要です。この際、金融機関から「いくらまで借りられます」と言われた金額を鵜呑みにするのは危険です。重要なのは、「無理なく毎月返済できる金額」から逆算して、総予算を決定することです。

ステップ1:現在の収支を把握する

毎月の収入、固定費(通信費、保険料など)、変動費(食費、交際費など)を詳細に洗い出しましょう。

ステップ2:将来のライフイベントを考慮する

子どもの教育費、車の買い替え、老後の生活費など、将来予測される大きな出費も資金計画に織り込みます。

ステップ3:無理のない返済額を設定する

手取り月収に対する住宅ローンの返済負担率は、一般的に25%以内が無理のない目安とされています(できれば20%以下を目指すのが理想)。ここから、借入可能額を計算します。

総予算  自己資金  無理なく借りられる住宅ローン額

この総予算から、後述する諸費用も差し引いて、純粋な建築費(土地代を含む場合は土地代+建築費)に充てられる金額を算出しましょう。

2. 「費用の内訳」を把握し、優先順位をつける

家づくりにかかる費用は、建築費だけではありません。見落としがちな「諸費用」もしっかりと予算に組み込む必要があります。

主な費用の内訳:

土地費用: (土地から購入する場合土地代、仲介手数料、登記費用、不動産取得税など。

建築本体費用建物本体の工事費用。

別途工事費用外構工事(庭、駐車場、門扉など)、地盤改良工事、解体工事(建て替えの場合)、空調工事など。

諸費用:

   ローン関連費用融資手数料、保証料、団体信用生命保険料、印紙税など。

   税金消費税、不動産取得税、登録免許税、固定資産税・都市計画税(引渡し後)。

   保険料火災保険料、地震保険料。

   登記費用建物表示登記、所有権保存登記、抵当権設定登記など。

   引っ越し費用、仮住まい費用、家具購入費など。

これらの諸費用は、総費用の10%15%程度になることが多いです。この認識がないと、予算オーバーの大きな原因となります。

優先順位のつけ方:

建築費が高騰しているからこそ、「譲れない部分」と「削れる部分」を明確にすることが重要です。

 譲れない部分構造の安全性(耐震性)、断熱性(省エネ性)、長期的なメンテナンス費用に影響する建材など、家の「性能」に関わる部分は安易に削らない方が賢明です。これらは後から変更が難しく、住み心地や光熱費、ひいては家の資産価値に直結します。

 削れる部分間取りの工夫(部屋数を減らす、水回りをまとめる)、建材のグレードダウン(ただし性能は維持)、設備の種類(必要最低限からスタート)、外構の簡素化(将来的に追加工事)など。

建築士と相談しながら、コストを抑えつつも、住まいとしての本質的な価値を損なわないバランス点を見つけることが大切です。

3. 「住宅ローン」を戦略的に活用する

前述の通り、住宅ローンの金利タイプ選びも重要ですが、ここではさらに踏み込んだ戦略的活用法をお伝えします。

 金利優遇の活用省エネ性能や耐震性の高い住宅(長期優良住宅、ZEH住宅など)は、【フラット35S】をはじめとする金利優遇制度の対象となることが多いです。初期投資はかかりますが、長期的に見れば総返済額を大きく削減できます。

 つなぎ融資の検討注文住宅の場合、土地取得時や着工時など、段階的に費用が発生します。住宅ローンの本融資は建物完成後が一般的なため、それまでの費用を賄う「つなぎ融資」が必要になることがあります。その費用も忘れずに予算に組み込みましょう。

 借り換えの視野将来的に金利が大きく変動した場合に備え、借り換えの可能性も視野に入れておくことも賢い選択です。

まとめ:専門家との二人三脚で、賢い家づくりを

建築費の高騰は確かに大きな課題ですが、適切な知識と計画があれば、決して乗り越えられない壁ではありません。

無理のない総予算を設定する。

費用の内訳を徹底的に把握し、優先順位をつける。

 住宅ローンは金利優遇なども含め、戦略的に活用する。

そして何より、信頼できる建築士やFP(ファイナンシャルプランナー)といった専門家と二人三脚で計画を進めることが、成功への一番の近道です。彼らは、あなたの理想と予算のバランスを取りながら、最適な資金計画をサポートしてくれるでしょう。

このサイトでは、建築士の視点から、住宅の性能とお金の関係についてさらに深く掘り下げていきます。ぜひ他の記事も参考に、あなたの家づくりを成功させてください。

イエシール / 一級建築士と賢く家づくり

タイトルとURLをコピーしました