深掘り解説コラム2 / 【建築士が解説】高性能住宅が、なぜ住宅ローン金利に有利なのか?

家づくりを検討していると、「高性能住宅」という言葉を耳にすることが増えたのではないでしょうか。「なんだか良さそうだけど、高いんでしょ?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、一級建築士として、私は声を大にして言いたいのです。高性能住宅は、単に住み心地が良いだけでなく、住宅ローンの金利においても有利になる可能性がある、と。

今回は、なぜ高性能住宅が住宅ローン金利に好影響を与えるのかを、金融機関の視点も交えながら詳しく解説していきます。

「高性能住宅」って、具体的にどんな家?

まず、「高性能住宅」とは具体的に何を指すのでしょうか。一般的に、高性能住宅とは以下のような要素を高いレベルで満たしている家を指します。

 * 高い断熱性・気密性: 夏は涼しく、冬は暖かい。冷暖房の効率が良く、一年を通して快適な室温を保ちやすい。

 * 高い耐震性: 地震に対する強度が国の基準(耐震等級1)よりも高く、大規模な地震にも耐えうる構造。

 * 省エネルギー性能: 太陽光発電システムや高効率な設備(給湯器など)の導入により、消費エネルギーを抑えられる。

 * 耐久性・維持管理のしやすさ: 長期にわたって劣化しにくい材料や工法が採用され、メンテナンスの手間や費用が抑えられる。

これらの性能は、「住宅性能表示制度」という国の制度に基づき、専門家によって評価・等級付けされることで客観的に示されます。特に重要な指標となるのが、耐震等級や断熱等性能等級(省エネ性能)などです。

金融機関が評価する「住宅の価値」とは?

金融機関が住宅ローンを貸し出す際、私たちがお金を借りる人(債務者)の信用力を見るのは当然ですが、実は「担保となる住宅そのものの価値」も非常に重視しています。なぜなら、万が一返済が滞った場合、金融機関はその住宅を売却することで貸したお金を回収するからです。

ここでポイントとなるのが、金融機関が考える「住宅の価値」は、単なる新築時の価格や広さだけではない、ということです。彼らは、将来にわたってその価値が維持されやすいかどうか、安定した資産として評価できるかを多角的に見ています。

高性能住宅が金利に有利になる2つの理由

この金融機関の視点に立つと、高性能住宅が金利面で優遇される理由が明確になります。

1. 長期的な資産価値の維持が期待できるから

高い断熱性や耐震性、耐久性を持つ高性能住宅は、一般的な住宅に比べて劣化しにくく、長期間にわたって良好な状態を保てます。これは、将来的に売却する際にも、より高い価格での取引が期待できることを意味します。

金融機関としては、担保物件の資産価値が長期にわたって安定していればいるほど、リスクが低いと判断できます。リスクが低い物件への融資は、金利を引き下げる要因となるのです。例えば、長期優良住宅の認定を受けた家は、その基準を満たしていることで、住宅の資産価値が担保されやすいと見なされ、特定の住宅ローンで金利優遇の対象となることがあります。

2. 将来の家計にゆとりが生まれ、返済能力が高いと見なされるから

高性能住宅は、光熱費を大幅に削減できるという大きなメリットがあります。例えば、断熱性・気密性が高ければ、冷暖房費が抑えられますし、太陽光発電システムがあれば電気代を自家発電で賄うことも可能です。

これらのランニングコストの削減は、住宅所有者の家計にゆとりを生み出します。家計にゆとりがあれば、予期せぬ出費があった際にも返済が滞るリスクが低く、また、繰り上げ返済などによって早期にローンを完済できる可能性も高まります。金融機関は、このような**「無理のない返済能力」**を高く評価し、金利優遇という形で還元することがあります。代表的なものが、フラット35Sです。これは、省エネ性や耐震性など、特定の技術基準を満たす住宅に対して、フラット35の金利から一定期間引き下げる制度です。

具体的な金利優遇の例:フラット35S

最も分かりやすい例が、住宅金融支援機構が提供する【フラット35S】です。これは、省エネ性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性のいずれかの基準を満たす住宅に対して、借入金利を一定期間引き下げる制度です。

 * 金利Aプラン: より高い性能基準を満たす場合に適用され、当初10年間金利引き下げ。

 * 金利Bプラン: 基本的な性能基準を満たす場合に適用され、当初5年間金利引き下げ。

このように、住宅の性能が高ければ高いほど、より長く金利優遇を受けられる仕組みになっています。

まとめ:高性能住宅は「賢い投資」

高性能住宅は、初期費用が一般的な住宅よりも高くなる傾向があるのは事実です。しかし、長い目で見たときに、住宅ローン金利の優遇、光熱費の削減、そして将来的な資産価値の維持という、数々の経済的メリットを享受できます。これはまさに、「賢い投資」と言えるでしょう。

一級建築士として、私は皆さんに「ただ安い家」を選ぶのではなく、「長期的に見て価値が高く、家計に優しい家」を選んでいただきたいと願っています。住宅の性能と金融商品の関係を理解し、あなたにとって最適な「賢い家づくり」を実現するための参考にしていただければ幸いです。

イエシール / 一級建築士と賢く家づくり

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